喉が痛いのなんかもうよくわからない。
異形に変わった。
私もアレを使う時だ。
本来なら、
カナヲ姉さんにしか使えないはずの技。
花の呼吸の使い手でも一握りの。
声に出して呼吸を言わないと使えなかった。
動きが大変鈍くなる。
大丈夫だ…みんなの怪我は軽傷だ。
ああ…良かった…よかった……
もう手遅れなの?
右足切断、右横腹が抉れ、左腕骨折。
吐血も多くて出血が酷かった。
あなたの下の名前の目はもう何も捉えていなかった。
多分失明してしまっている。
本当に最後なんだ。
現実を突きつけられて、
僕はまだ息があるうちにと思った。
言葉を紡ぐ暇はなかったから、代わりに。
僕はあなたの下の名前に口付けをした。
最初で最後のそれは、血と僕の涙の味がした___
優しい日が差し込んでいた。
ここは…そうだ、戦いは…終わったんだ。
「元霞柱 時透 無一郎 宛」
綺麗な、あなたの下の名前の字で書かれた
僕宛ての遺書を開いた。
わかってたんだね。
僕が君のそばにいるのも、
僕が君の後を追いかけようとしていたことも。
本当は、あなたの下の名前だってまだまだ
生きたかったはず。
同い年なのに、あなたの下の名前が紡ぐ文字は
ずっと大人っぽくて、優しかった。
蝶屋敷の窓の外には、
「必勝」という桜が満開だった___












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。