第39話

見渡せば
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2025/02/11 07:05 更新
あなた
もう、潮時ですね
喉が痛いのなんかもうよくわからない。
異形に変わった。
私もアレを使う時だ。
本来なら、
カナヲ姉さんにしか使えないはずの技。
花の呼吸の使い手でも一握りの。
あなた
花の呼吸 終ノ型 彼岸朱眼
声に出して呼吸を言わないと使えなかった。
動きが大変鈍くなる。

大丈夫だ…みんなの怪我は軽傷だ。
ああ…良かった…よかった……
無一郎
あなたの下の名前…!
もう手遅れなの?
右足切断、右横腹が抉れ、左腕骨折。
吐血も多くて出血が酷かった。
あなた
無一郎くん、
無一郎
あなたの下の名前…
あなたの下の名前の目はもう何も捉えていなかった。
多分失明してしまっている。
あなた
待ってる、ね、
無一郎
待って…お願い…まだ…
あなた
愛してる、
本当に最後なんだ。
現実を突きつけられて、
僕はまだ息があるうちにと思った。
言葉を紡ぐ暇はなかったから、代わりに。

僕はあなたの下の名前に口付けをした。

最初で最後のそれは、血と僕の涙の味がした___
無一郎
………
優しい日が差し込んでいた。
ここは…そうだ、戦いは…終わったんだ。
無一郎
あなたの下の名前っ…僕、
ちゃんとできたよねっ…
兄さんも、見ててくれたよねっ…
有一郎and夢主
頑張ったな
    /ね
無一郎
っ…!
カナヲ
これ…あなたの下の名前の遺書です。
無一郎
………
「元霞柱 時透 無一郎 宛」
綺麗な、あなたの下の名前の字で書かれた
僕宛ての遺書を開いた。
あなた
無一郎くん、あなたの下の名前です。
私が先に逝く頃には戦いが終わっていると信じて、「元霞柱」としました。
あなた
さて、恐らく私が死ぬ頃には、
私にはあなたの姿が全く見えていません。それでも、ちゃんとわかります。最後までそばに居てくれたのがあなただということが。
だから嬉しかった。
あなたといれたことが。
あなた
無一郎くんに伝えておきたいことを、
幾つか書いておきます。
一つ、私の後を追いかけようとしないで。あなたのお兄さんも私も、それは望んでいないよ。
ちゃんと待ってるから、ゆっくりね。
二つ。私はあなたのことを愛してます。
初めて出会った時から好きです。
それは例え老いても変わりません。
あなた
見渡せば
春日の野辺に
立つ霞
見まくの欲しき
君が姿か
あなた
あなたが血戦から目を覚ますのは
春頃でしょう。
少し冷えた美しい野辺に
あなたがいるのを、
私はずっと隣で見ていたい。
あなたが堪らなく愛おしいから。
無一郎
っ…あなたの下の名前っ…
わかってたんだね。

僕が君のそばにいるのも、
僕が君の後を追いかけようとしていたことも。
本当は、あなたの下の名前だってまだまだ
生きたかったはず。
同い年なのに、あなたの下の名前が紡ぐ文字は
ずっと大人っぽくて、優しかった。

蝶屋敷の窓の外には、
「必勝」という桜が満開だった___

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