「シオンくんが好き」
そう言われた時、嬉しかった。
嫉妬してくれて、嬉しかった。
一緒の気持ちだってちゃんと分かって、嬉しかった。
なのに、聞いてないふりをした。
返事なんてできなかった。
"僕も同じ気持ちだよ、付き合ってください"
言葉にすれば、全て崩れてしまうから。
これまでのこと全部を無駄だったことにしてしまうから。
好きだったダンスを捨てた
アイドルになりたいって夢も捨てた
友達と遊ぶ時間も捨てた
でも
あの子への思いは捨てきれなかった
休むことなく走り回り、周りの期待に応えて、好きなことに突き進んでいく友人たちに目もくれず、がむしゃらに。
流れを変えることなくただ視界が開ける海に向かって流れる川のように、
ただ親の敷いたレールをひたすらに走り続け、親の夢の中で輝けるように、
だから俺はあの子の言葉に応えれなかった。
「シオン先生、!これ確認お願いします」
「すぐお返ししますね」
あれから5年。
あの日から韓国に戻って、医学部がある大学に進学した。
今は医師免許を取って、附属の大学病院で研修医として働いてる。
昼休憩時間、購買で買ったパンを齧りながら弟からの喜び溢れるカトクに
と返信をした。
ジェヒは日本の高校を卒業した後、ピアノを学びたいとオーストリアの音楽大学に留学した。
幼い時からピアノが大好きで、才能が花咲かせコンクールでは沢山の賞をもらっていた。
自慢の弟だったし、好きなことをこんなにも大きな物にした弟を尊敬していた。
なのに、
将来の夢はピアニストだと言っていたジェヒは俺が高校に行った後、ピアノを辞めていた。
理由は当の本人はなにも言わなかった。
でももう一度、ピアニストを目指すと言ってくれた時はグランドピアノを買ってやると意気込んだし、音楽家を多く輩出している音楽大学や有名ピアニストが主催しているコンテストを夜通し調べていたし、とにかく張り切っていたと思う。
やめてよㅎとそんな自分を嬉しそうに止めていたジェヒは今や若手の有名ピアニストだ。
『シオニ?』
休憩室のカーテンが開いて顔を出したのは医学部からの同期のウォンビン。
こいつとは研修医期間中、一緒に科を回ってる。
『お疲れ』
弁当を片手に入って来たウォンビニも一緒に昼食をとる。
『何ニヤニヤしてるの?』
盛り上がっているカトクを見て口角が緩んでいることにウォンビナに言われて気づく。
『弟の公演が決まってさ』
『ピアニストの?』
『うん』
ウォンビナには何度か弟の話をしたことがあった。
さっき話した大体のことは知っている。
『俺も弟くんの公演いきたいな』
チヂミを一口食べた後、そう言ったウォンビナに頭を傾げる。
『お前、そう言うの興味あるっけ?』
『シオニの弟だから興味ある』
『なんだそれㅎ』
まぁでも、いい機会だし、
ジェヒにチケット頼んどこう














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!