第2話

🌙💕pr.2
233
2024/07/10 09:09
流石にプロローグ短過ぎたんでロングバージョン作りました笑笑
''はるか昔、大戦にてこの世が滅び  極北の地において人は再び歩み始めた
 されど、その西の果てに孤島があり 戦に巻き込まれず 世に知れず 1000年
 光に包まれ はなやぐ 黄金の島 名はミリセリム 豊かな才術の国''
     

漆黒の雲が次から次へと高速で駆け抜け、草木は地に着きそうなほど傾いていた。
散弾銃から飛び出したような激しい雨が、ほぼ真横に降っている。
どこかの家の締まりの悪い門が強風に煽られ、不快な金属音を立て続けている。


四方を海に囲まれたミリセリム国。
首都サランの郊外の丘にたたすむ、重厚な石造りの
ユン・シエル家の2階で、産声が上がった。
産術師から白い布に包まれた赤子を渡された立派な体格の男は、喜びで頬を濡らした。
今年40になる男は、この日をどんなに待ち侘びた事だろう。
妻は安堵感に溢れた表情で、寝床からそれを見つめていた。
嫁に来て7年の間、子宝に恵まれず、諦めかけていた頃にやっと授かった子である。
予定日から数日早いだけで、こうやって無事に産めた喜びは大きい。
ユン シエル
こ、これは!!
男がうろたえて叫んだのは、その赤子が、泣き止んでようやく目を開けた時だった。
ユン シエル
なんと言う事だ、、なんと言う事だ、、、
男は眉間に皺を寄せて産術師に赤子を突き返し、同じ言葉を繰り返しながら、
天まで届きそうな高い天井を仰ぎ、部屋の中を早足で歩きまわった。
産術師も赤子の目を覗き込んだ途端表情を変え、おろおろして、母親の細い腕に赤子を託した。
若い母親は、生まれたばかりの小さな息子を見た。
白ウサギのような真っ白な肌に、長いまつ毛、そして愛くるしい目。
褐色の瞳は大きく、ぼんやりと母親を見つめている。
しかし、そこにはあるはずの光がなかった。

プリ小説オーディオドラマ