~ tt side
じゃぱぱが俺を連れて入ったのは、全国チェーンのファミレスだった。
しかも、「カニフェア、やってるんだって!!」とか言って。
子供みたいに、目をキラキラさせて。
でも、席に座って、料理が届いて。
2、3口食べてから、じゃぱぱはフォークを置いた。
__気が気じゃなくて食べられない気もするけど。
…仕事…、
そう言われて、じゃぱぱの仕事を思い浮かべた。
俺とじゃぱぱが出会った場所。
そして__
喧嘩の理由に、なった場所。
俺が、疲れている時だった。
曲がる道を一本間違えて、ホスト街に踏み入ってしまった。
そこは、普段の俺なら無縁の場所。
何度「すいません、」と断ったか分からなかった。
そのあと、あるメイドに強引に店に連れて行かれそうになったんだ。
振り払ったら、逆ギレされるかな…、
そうなったらさらに面倒になる…
なんとか踏ん張っていると、突然後ろに肩を引かれた。
前に引っ張られないように踏ん張っていたせいで、
いとも簡単にバランスを崩した俺。
っ、転ぶ…!
あまり聞かない、パクチーボイス。
今の俺は確実にこの男の腕の中。
そして聞こえてきたトンデモ発言。
俺は、動揺した。
んべ、といたずらっ子のように舌を出す赤髪の男の人。
俺は咄嗟に、誰やねん、と言いそうになるのをなんとか堪えて、ネープレートを見た。
苦しい言い訳。でも、メイドがどんな表情してるかを確認する前に、じゃぱぱさんに抱き上げられた。
何かお礼はできないか…なんて考える。
会社を出る頃には思いもしなかった。
ホストクラブのソファに座って、ホストと話すことになるだなんて。
俺も思わなかった、とは言わないでおこう。
指名をしてもらえると指名メニューの上の方に載せてもらえるらしい。
指名数が多いほど、上に載る。
そうすることで、客もつきやすくなる。
…ということらしい。
駆け出しの彼、じゃぱぱは早く人気になりたいらしい。
知っとるよ、とは言わないでおいた。
お洒落な名刺を貰う。
名刺入れを開いても、それと似たような名刺は一枚もなく、なんだかとても目立っていた。
癖のように、自分の名刺を渡してからふと気づく。
…渡さんくても良かったか、
ふふん、と少し嬉しそうに話すじゃぱぱ。
そこでふと、遠くからシャンパンコールが聞こえてきて思い出す。
ここはホストクラブ…と、いうことは、シャンパンで稼ぐんだよな…?
そっか…と遠慮がちにメニューを取り出すじゃぱぱ。
売られてるアルコールは、お洒落なものばかりであまり聞いたことがない名前の方が多かった。
もっとも、お酒に弱い俺にとっては安心できるような、できないような…なんとも言えなかったけど。
そうして届いた2本のグラス。
俺たちは乾杯をしてグラスを仰いだ。
くすくすと笑うじゃぱぱは、なんだか幼く見えた。
そうして、俺らは少し話をしてその日を終えた。
__また来週、会う約束をして。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。