その日も、いつも通りだった。
電車を降りて、家までの道を歩く。
夕方の空気は少し冷たくて、考え事をするにはちょうどいい。
——体育祭、か。
頭の片隅で、親の言葉を反芻した、そのとき。
プルルルルル、プルルルルル。
スマホが震える。
画面に表示された名前を見て、足が止まった。
出るかどうか、一瞬迷う。
でも、逃げ続ける理由も、もうなかった。
四つ上の従兄。
風楽奏斗。
懐かしい声なのに、胸の奥が少しだけ緊張する
無難な答え。
本当のことを言うほど、近くはない。
やっぱり、その話題か。
電話越しの声は、軽い。
でも、その軽さの下に、
何か別の目的がある気がした。
——関わったら、また過去が動く。
そう思ったのに、
不思議と嫌な感じはしなかった。
その一言が、少しだけ救いだった。
電話を切って、歩き出す。
私はまだ知らなかった。
この体育祭が、
自分の中に残っていたものを
ちゃんと終わらせてくれる場所になることを。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。