第2話

烏野なのに大きな猫が一匹
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2026/02/15 10:47 更新
あなたサイド

『、、、あなたさん。運ぶの手伝います。』

体育館の入り口で、ドリンクの準備をしていた私は、背後から降ってきた低い声にびくっとして肩を跳ねさせた。 振り返ると、そこには不敵な笑みを浮かべた月島くんが立っている。

「もう、びっくりさせないでよ。あと大丈夫だよ。」

『大丈夫じゃないデショ。効率悪いし』

そう言いながら、彼は私からボトルのカゴを奪い取るようにして、自分でカゴを持っている。

昨日、ショートケーキの苺をあげてからというもの。

なんだか、月島がやたらと私の近くに現れるようになった気がする。

今までは、山口くんと一緒に隅っこで静かにしているタイプだったのに。

「、、、あの、月島?準備なら私がやるから、練習戻らなくていいの?」

「休憩中です。あ、そのタオル。僕のですよね」

彼が指差した先には、私が畳もうとしていた、少し使い込まれた黒いスポーツタオル。

「あ、うん。今畳もうと思って」
と返すと、彼はなぜか私の手元からタオルをひょいと取り上げた。

『、、、自分でやるんで。』

「えっ、いいよ! それくらいマネージャーの仕事だもん」

『いいから。、、、先輩、手、赤くなってますよ。水仕事ばっかりしてるから』

そう言って、彼は私の指先に一瞬だけ、視線を落とした。 眼鏡の奥にある瞳は相変わらず冷たそうに見えるけれど、言葉の端々に、昨日まではなかった「何か」が混じっている気がした。

練習が再開されても、彼の視線を感じることが増えた。 ボールを拾いにコートの端に来るたびに、彼は必ずと言っていいほど私の横を通り過ぎる。

『あなたさんスコア書くとこ、こっちですよ。』

『あなたさん、ビブス、柔軟剤の匂い変えました?』

『あなたさん、、、』

いちいち一言多いのは相変わらずだけど、呼ぶ回数が明らかに増えている。 隣でドリンクを飲んでいた山口くんが、不思議そうに私たちを交互に見ていた。

「ツッキー、今日なんか機嫌いいっていうか、、、あなた先輩のこと、追いかけすぎじゃない?」

『、、、別に。山口、うるさいよ』

月島はぷいと顔を背けた。 でも、その耳の端が少しだけ赤くなっているのを、私は見逃さなかった。

(……もしかして、昨日の苺のこと、まだ気にしてるのかな?)

188センチもある大きな後輩が、まるで自分のテリトリーを確認するように、私の周りをうろうろしている。 その様子がなんだか、少しだけ……大きな猫が懐いてくれたみたいで。

「月島。はい。今日もお疲れ。」

練習終わり、彼に新しいタオルを手渡すと、彼は『、、、ドウモ。』短く呟いて、受け取る時にわざと(だよね?)私の指に自分の指を重ねた。

『あの、先輩』

「ん?」

『、、、明日も、いちご、、、待ってますから』

それだけ言って、彼は足早に部室へ向かってしまった。 心拍数が上がっておかしくなりそうだった。というかもう差し入れは全部三年生にあげちゃったよ。

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