最近、眠れない夜が続いている。
目を閉じたら、世界から切り離されたみたいな、
ひとりぼっちになったみたいな気持ちになって、怖い。
誰かと一緒に寝られたらいいけど、
家族にはきっと笑われるからダメ。
毎日怖い、寝たくない、とか考えてしまったから。
ひとりぼっちの私を守るように
脳が寝かせてくれなくなってしまった。
ベッドに入って数時間。今日もどうせ寝られない。
外に行きたい。
コンビニとか、そんな近いところじゃなくて、
誰も行ったことがないような場所に。
なんて柄にもなく思うけど、私にそんな気力はないし。
半分諦めて身体を起こす。
最初は色々妄想して夜を過ごせていたけど、こうも毎日続くと考えることももうない。
退屈だから窓の外を見ることにした。
まぁこれで退屈が凌げるわけでもないが。
ただ今寝られなくて暇なだけなのに、人生ごとつまらなく感じてしまう自分は結構嫌いだったりする。
自己嫌悪のせいで目から何かが零れそうになったけど、
急いで拭って、なかったことにした。
星がきれいだ、とか、月が優しい、とか。
昔考えていたロマンチックな感情は、
もう私には思い出せない。
「…眠れない?」
いつのまにか開いていた窓から声が聞こえた。
というか目の前にいる。人が。
「ひっ…!」
眠れない?なんて、
突然知らない人に聞かれても答えられない。
黒い瞳と綺麗な肌。
静かで幻想的な顔立ちな男の子。
いい意味で人間味がなくて、
でも、突然現れたことを除けば不思議と怖くはない。
「……っあぁ…うん…?」
私は質問に答えるつもりも無かったのに、
返事を待つようにずっと目を合わせてくるから。
静かに答えると彼は嬉しそうに笑った。
「外、行かない?」
彼がそう言うとそのまま、
私は彼に手を取られていた。
ふわり、と身体が浮かぶ。
空に近づいて、雲の隙間を抜けた。
風をダイレクトに感じて、気持ちいい。
「……す、すごい!…たのしい!」
「ほんとに?よかった」
この感覚を言葉にすれば足りないけど、
言うなれば、アラジンのジャスミンになった気分だ。
この名前も知らない男の子が私を連れ去って、
私たちは空に浮かんでいる。
ほら、まさにそうじゃない?
もちろん絨毯なんてないけどね。
「…ユウシ。僕の名前。君は?」
「…?ゆうし、くん?
わたしは……あなただけど…」
心を読まれたのか、
変なことを考えている私に気づいたのか。
名前を伝えると彼はふっと笑って、
どこか懐かしそうに私を見た。
「あなたちゃん、いつも泣いてたよね。
…ずっと、見てたよ」
「泣いてない……ことは、ないけど」
嘘をつこうと思ったけど、やめた。
ゆうしくんには、全部お見通しみたいだったから。
空の旅の果てにたどり着いた場所は、
きらきらした、小さな島だった。
星の光に照らされた丘、白い花が一面に咲いていて、風が吹くたび、その花びらが宙を舞ってて。
夢みたい。
でも、これが現実だと信じたかった。
それから、誰にも言えなかった私の不眠の話をして、
ちょっとした世間話もした。
彼と過ごす一秒一秒が、あまりにもあたたかくて。
話してるうちにいつのまにか…
……もしかして、私は彼のことが…
「あの、ゆうしくん、
…わ、わたし、君のこと、」
伝えようとした瞬間、風が強く吹いた。
ゆらゆら浮いていた白い花が一気に空に巻き上がり、
それが視界の邪魔をして彼が見えない。
「ごめん。もう行かないとだ」
やだ、待ってよ。まだ伝えれてない。
「わかってるよ。…ありがとう」
彼の声が遠くなっていく。
私は手を伸ばしたけれど、何も掴めなかった。
風と共に、私は島から追い出された。
「っはぁ…!…はぁ、」
次に目を開けたとき、私はいつも通りの天井を見る。
心臓がバクバクして落ち着かない。
今見ていたのは他の人にとっては夢だが、
私にとっては現実だった。
ただ、まだあの時から30秒も経っていないはずなのに、
彼の姿も名前も思い出せない。
だけど、交わした言葉だけは鮮明に覚えている。
あの時、彼に言えなかったことも。
「…すき。…なんちゃって」
軽く伸びをして起き上がる。
久しぶりに眠れていたみたい。
まだ少し、ねむたいけど。
今日の夜はちゃんと眠れる気がするから、
頑張って1日を乗り越えようと思った。








![[P]🪐今夜も星空が綺麗ですね🌙](https://novel-img-gcs.prepics-cdn.com/prcmnovel-tokyo-prod-converted-images/p/BwDkijvEjialRcks2h76etabyU93/cover/01KKGN43K0BA70ZY66VBE23D38_resized_240x340.jpg)


編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。