第3話

3話
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2026/03/30 11:00 更新




昼休み。





教室はいつもより、少しだけ騒がしい。

みんなそれぞれ、友達とお弁当を広げている。




私はというと——


自分の席で、一人で食べるつもりだった。





(今日は……どうしよう)

ちらっと隣を見る。




言くんは、机に軽く肘をついて、静かにパンを食べていた。

相変わらず、誰とも話していない。



(……昨日、少し話したし)


ほんの少しだけ、迷う。

話しかけてもいいのかな、って。










でも——



(やっぱり、急に話しかけるのも……)

そう思って、視線を戻そうとしたとき。





言「……食わないの」

私「え?」




気づくと、東くんがこちらを見ていた。



言「弁当」

私「あ、ううん、食べるよ」



慌てて蓋を開ける。



言「……そ」

それだけ言って、また視線を落とす。

——でも。



さっきの一言。

(話しかけてくれた……)



それだけで、少し嬉しくなる。















少しだけ勇気を出してみる。


私「あの……東くんって」



言いかけて、止まる。

(……あ)





“東くん”って呼んでいいのか、一瞬迷った。

でも、もう言っちゃったし。

東くんは、ちらっとこちらを見る。




言「……何」

私「その……パン、それだけで足りるの?」





変な質問になってしまった。



(もっと他にあったでしょ……)

そう思ったけど、




言「……別に」



いつも通りの短い返事。

でも、そのあと。



言「お前こそ、それだけなの」

私「え?」



お弁当を見られる。




私「うん、まあ……」

言「……少な」




ぼそっと言われた。



私「えっ」


思わず顔を上げると、

ほんの少しだけ、口元が緩んでいる気がした。



(今、ちょっと笑った……?)


気のせいかもしれない。

でも——

なんだか、少しだけ距離が近くなった気がした。













授業が終わって、帰りの時間。




今日もまた、隣の席は静かだった。

でも昨日と違うのは、


その静けさが、少しだけ心地よく感じること。

荷物をまとめていると、

ふと、思う。




(名前……)



“東くん”じゃなくて。


(東、言くん……)




下の名前で呼ぶのは、まだ少し勇気がいる。






でも——



(いつか、呼べるようになりたいな)

そんなことを思った自分に、少し驚く。






隣の席の距離は、変わらないはずなのに。

少しずつ、確実に。

何かが変わり始めていた。









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