第5話

第4話 崩せない日常
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2025/06/07 06:00 更新





青ちゃん、
ここの振り、もう少し重心落として…
……うん、分かった。こう、?
うん、だいぶいいですね!
やっぱ青ちゃんは修正早い!!笑

黄くんがふわっと笑った。

いつも通りの優しい声。

でも、その奥にある " 観察する目 " を、
僕はうっすら感じていた。

( ……気のせい、だといいんだけどな )

あれから、僕は何も言わずいつも通りの練習、
いつも通りの振る舞いを続けていた。

病院で言われた " 進行する記憶障害 " という言葉は、
心の奥に封じ込めたまま。





もし、これが夢だったらいいのに。





そんな願いを抱くようになった自分が、
少しだけ怖かった。






















はい、休憩ー!

赤くんの元気な声がスタジオに響く。

僕と黄くんの間に入り込むように、
タオルを肩にかけながら笑った。

いや〜今日も汗かいたわー!
青ちゃん、ちゃんと水分とってる?
あ、うん……ありがとう、赤くん
しかも最近ちょっと、細いよ?
ごはん食べてる??
食べてるよ、
大丈夫、ちゃんと
ほんと〜?
青ちゃん、無理しがちだからさ〜?
俺、わかってるからね?
…ふふ、なんかそれ、嬉しいけど怖いなぁ

赤くんはくしゃっと笑ったけど、その目の奥にも
やっぱりほんの少しだけ
" 気づきかけ " の気配が見えていた。

( …このままじゃ、いずれバレちゃう )

でも、今はまだ。

今だけは、何も崩したくなかった。





















夜。

マンションに帰る途中のエレベーターの中。

隣に立つ桃くんは、じっとスマホを見ていたけど、
ふと、ぽつりと口を開いた。

……最近さ、
お前、…ちょっと笑うの減ったよな
……え?
いや、なんとなくだけど。前はさ、くだらないことでもすぐ吹き出してたじゃん、
そ、そうかな…… 
それになんか、ちょっと、俺に
嘘ついてんのかな〜って思うときもあるし

一瞬、心臓が止まりそうになった。

桃くん……っ
……別に、無理に言わなくてもいいけど。
俺、やっぱ相方だしさ。
見てれば分かるとき、あるんだよ 笑笑

笑いながら言うその声が、どこまでも優しかった。

それが、今の僕には一番刺さった。

……大丈夫だよ。
ちょっと疲れてるだけ、!
…そっか、

それだけ。

桃くんはそれ以上、何も言わなかった。

でも、背中越しの " 心配 " が、確かに伝わってきた。






















部屋に戻ると、急に身体が重くなった。

ベッドに倒れ込んで、スマホを開く。





「 20xx年xx月xx日 」

・黄くん、赤くん、微妙に気づきかけてる?
・桃くんは、多分もう気づいてる。
 でも言わないでいてくれる。
・この日常を壊したくない。
 けど、僕の中で何かが壊れていってる。





( どうしたらいいの、僕… )

目を閉じると、今日のレッスンで間違えた振りの一瞬が、何度も頭に浮かんだ。





違う。

間違えたくて間違えたんじゃない。

ただ、頭のどこかがもうついていけてなかった。






















翌朝、鏡に映る自分の顔を見て思った。

( 笑ってる " フリ " が、
上手くなったなぁ、僕 )











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