あの日から、時間がゆっくりと過ぎていった。
ステージの熱狂、ファンの涙、
メンバーの手のぬくもり ──
全部が、夢のように遠くなっていく。
けれど僕は、まだここにいる。
青として、そして " 僕 " として。
赤くんが、僕の好きなプリンを差し出してくる。
赤くんの笑顔は、
前よりも少しだけ大人っぽくなっていた。
黄くんが、そっと渡してくれた冊子には、
可愛らしいメモが挟まっていた。
《 このシーンで青ちゃんが笑ってくれた。
すごく嬉しかった 》
そして、ある日。
僕の隣に、桃くんが座った。
桃くんは笑わない。
でも、まっすぐに僕の目を見るその姿は、
あの頃のステージと同じだった。
静かに、でも確かに届いたその言葉は、
まるで音楽みたいに胸の奥に響いた。
ふたりで歩いた公園のベンチに、陽が差していた。
20xx年xx月xx日
桃くんと一緒に、同じ道を歩いた。
名前を忘れても、景色がぼやけても、
桃くんの声だけは心に残る。
赤くんのプリン、優しい味だった。
黄くんのメモ、僕の記憶の欠片たち。
僕は幸せだ。
僕が " 青 " だったこと、忘れてもいい。
でも、君たちがいてくれたことだけは、忘れたくない。
── ありがとう。僕を、見つけてくれて。
空はどこまでも澄んでいた。
遠くで子どもたちが歌っている。
そのメロディーは、どこか懐かしくて、
心がぎゅっと締めつけられるような優しさがあった。
桃くんが隣で笑っている。
僕は、その笑顔だけを目に焼きつける。
そして、もしまたステージに立てる日がくるなら ──
その時も、きっと君の手を取る。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!