第11話

最終話 君がいた光
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2025/06/08 09:00 更新





あの日から、時間がゆっくりと過ぎていった。





ステージの熱狂、ファンの涙、
メンバーの手のぬくもり ──

全部が、夢のように遠くなっていく。





けれど僕は、まだここにいる。

青として、そして " 僕 " として。






















青ちゃん、これ食べる?

赤くんが、僕の好きなプリンを差し出してくる。

ありがと、赤くん。
……これ、赤くんが作ったの?
うん、最近料理にハマっててさ!
青ちゃん、味覚はまだ大丈夫?
うん、ちゃんと甘いよ。
優しい味がする
……!よかったぁ 

赤くんの笑顔は、
前よりも少しだけ大人っぽくなっていた。






















ねえ、青ちゃん。これ、昨日一緒に見た
映画のパンフ。覚えてる?

黄くんが、そっと渡してくれた冊子には、
可愛らしいメモが挟まっていた。





《 このシーンで青ちゃんが笑ってくれた。
すごく嬉しかった 》

……黄くんのメモ、毎回すごく丁寧だね?
記憶が飛んじゃっても……
何度でも思い出せるように、です。
……ちょっとだけ、保険ですけど 
ありがとう、黄くん。黄くんの言葉は、
ずっと僕の中にある気がする






















そして、ある日。

僕の隣に、桃くんが座った。

なあ、青。今日はさ、どこ行きたい?
どこでもいいよ?
……桃くんが隣にいれば、それでいい
……そっか。じゃあ今日は、ゆっくり
歩こう?名前も景色も忘れてもいい。
でも、お前が " 歩いた " ってことだけは、
俺が覚えてるから
……桃くん、

桃くんは笑わない。

でも、まっすぐに僕の目を見るその姿は、
あの頃のステージと同じだった。

俺、正直に言うとさ。お前のこと、
好きだった。……いや、今でも、好きだよ

静かに、でも確かに届いたその言葉は、
まるで音楽みたいに胸の奥に響いた。

……僕も、桃くんが好き。
きっと、この先忘れちゃっても、…
何度でも、好きになれる気がする 、

ふたりで歩いた公園のベンチに、陽が差していた。



























20xx年xx月xx日

桃くんと一緒に、同じ道を歩いた。
名前を忘れても、景色がぼやけても、
桃くんの声だけは心に残る。

赤くんのプリン、優しい味だった。
黄くんのメモ、僕の記憶の欠片たち。


僕は幸せだ。

僕が " 青 " だったこと、忘れてもいい。
でも、君たちがいてくれたことだけは、忘れたくない。



── ありがとう。僕を、見つけてくれて。


























空はどこまでも澄んでいた。





遠くで子どもたちが歌っている。

そのメロディーは、どこか懐かしくて、
心がぎゅっと締めつけられるような優しさがあった。





桃くんが隣で笑っている。

僕は、その笑顔だけを目に焼きつける。

( 僕はきっと、何度でも出会える )
( また名前を呼んで。また隣にいて )

そして、もしまたステージに立てる日がくるなら ──

その時も、きっと君の手を取る。

……桃くん?
ん?どした?
今日も、僕は桃くんが好きだよ
 俺も。今日も、明日もな











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