〈始まった〜!
〈1回しか配信してないけど、むっちゃおもろいw
〈心夜のこと好きw
〈お!早く決めよ
〈はよやろ
〈今すぐやろ
〈うわぁめっちゃいい✨️!
〈夜のメニュー候補って言い方好き
〈夜のメニュー候補と喫茶店のメニューって、その人がいいなって思うものを尊重してるみたい!
〈モチーフ喫茶店?
〈推し活喫茶的な感じかな?
〈喫茶店めっちゃいい
〈これが、あの常連王なんてねw
〈最近、若旦那が来ないって思ったらこんなことしてたんだ【葛葉】
〈リスナーに言われてきたら、どタイプw【不破湊】
〈え?どしたん?
〈え?なになに
〈大丈夫、?
〈何が原因?
〈なんだ?
〈なぜ?
マイクをミュートにする。
さっきまで流れていた自分の声が、急に遠くなる。
BGMだけが、まだ残っている。
カーソルを、配信終了のボタンに合わせる。
……押せば、終わる。
少しだけ、指が止まる。
画面の向こうには、まだコメントが流れている。
〈心夜大丈夫?〉
〈落ち着いてな〉
〈今日もありがとう〉
――ありがとう。
小さく息を吐く。
クリック音が、やけに大きく響いた。
【_淡乃か心夜が配信を終了しました_】
画面が切り替わる。
部屋が、静かになる。
「……若旦那」
呟いた声は、もう誰にも届かない。
最初は、嬉しかった。
名前を呼ばれているみたいで。
覚えてもらえた気がして。
ただ好きで通って、
ただ話し方が好きで、
ただ歌声が好きで。
それだけだった。
赤スパだって、見返りが欲しかったわけじゃない。
でも。
〈調子乗ってるよね〉
〈金あるアピール?〉
〈ウザいんだよ〉
通知欄に並んだ、知らない名前。
いつからか、“若旦那”は
祝福じゃなくて、線を引く言葉になった。
特別なんか、いらなかった。
「……俺は、ただのリスナーだった」
暗くなったモニターに映る自分を見つめる。
心夜として始めたのは、
何も背負わずに、好きでいるためだったのに。
「……バレたく、なかったのに」
部屋の静けさが、やけに重い。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。