第24話

#8 修学旅行の時間・2時間目-②-
198
2025/09/19 23:12 更新
AM3:18





ふと目が覚めた





周りを見ると、皆んなはグッスリ眠っていた





すぐに寝付けそうにないし





少し喉もも渇いた





私は皆んなを起こさない様、ゆっくりと布団から出て





廊下に出た





あなた「……………綺麗





廊下は灯り一つついて無いけど





月が照らしてくれているおかげで、周りは明るかった





三日月





4月





先生が月を破壊してから、ずっとその形をしていた





けど、形が変わっても夜の月の存在感は変わらない





私はその存在感を頼りに、ロビーに向かった





自販機で水を買い、部屋に戻ろうか考えたけど





まだ寝付けそうな気がせず、近くのソファーに腰を下ろした





ペットボトルの蓋を開け、渇いた喉に水を流し込む





あなた「………………」





少し古い旅館という事もあり、





灯りがついていた時とはまた違う感じがして少し怖い





やっぱり部屋に戻ろうと思ったその時





フワッ





あなた「っ!?」





急に目の前が真っ暗になった





誰かに目を覆われた





驚きに声をあげそうになったが





何かこの手…………知ってる気がする





あなた「赤羽………君?」





何かそんな感じがし、声をかけると





赤羽「な〜んだ、バレちゃったか」





覆われていた手が離れ、後ろを向くと





そこにはイタズラな顔をした赤羽君





あなた「ビックリしたよ」





赤羽「その割にはよくすぐに俺だってわかったね」





確かに





迷いはしなかった………かも





あなた「何か、知ってる手の感じがして………」





赤羽「ふ〜ん」





ソファー座る赤羽君





そう言えば何でここにいるんだろ?





寝られなかったのかな?





あなた「寝られないの?」





赤羽「別に、そういうわけじゃ無いけど ちょっと喉渇いてさ そう言うあなたこそ、こんな時間にどうしたの?」





あなた「ちょっと目が覚めちゃって 喉も渇いてたからついでに……………」





赤羽「そっか…………」





2人の間に流れる沈黙





何か話した方がいいのかな?





しかし、先に沈黙を破ったのは赤羽君の方





赤羽「ねぇ、旅館に戻ってくる時のことだけど……………別に無理に話して欲しいわけじゃ無いけど、やっぱり気になってさ」





あなた「………………」





赤羽「俺には話せない?」





あなた「………………」





別に話せないわけじゃ無い





いや、話したく無いかと聞かれたら話したくは無いけど





聞いてる人も気持ちのいいものじゃ無いし





けど…………





まっすぐ私を見る赤羽君





この事なら話してもいいのかもしれない





あなた「……………多分聞いてて気持ちのいい話じゃ無いかもしれないけど、いいの?」





赤羽「うん 知りたいから」





迷いなくそう言う赤羽君





そして私は口を開いた














あれは、2年前





ピアニストとして頻繁に活動していた時





ある熱狂的なファンと出会った





その人は大学生で、昔自分もピアノをやっていて





私の演奏に惹かれ、よく演奏を聴きに来てくれた





最初は挨拶から始まり





徐々に会話をする中になった





ご飯に誘われる事もあったけど、そこはしっかり断って





ピアニストとファン





その線引きはしっかり出来てると思っていた





けど、ある時から急に誘いが強くなって





一度だけご飯に行った事があった





多分それが間違い





そこから要求はさらに強くなって





レッスンの終わりなど、待ち伏せされる様になった





急に怖くなって、すぐに親や関係者に相談して一時はそれが治った





けど、治ったと思っていたそれは全然で





私の前に現れなかっただけ





ずっと私の後をつけていたんだ





そして事件は起こった





レッスンの帰り、いつもの道を歩いてると





急に腕を引かれ、狭い路地に連れ込まれた





そこで私は、襲われかけた





丁度近くに来ていた結翔兄が迎えに来てくれていて





中々出てこない私を心配し、探してくれていた所を見つけてくれて





その人は捕まった





あの事件から私は、男の人が怖くなった





あの時強く掴まれた腕





到底振り解けるものではなかった





触れた手の感触





今日のアレが、それを思い起こさせた





まだ中学に入学したばかりでもあり





大事にはしたくなくて





その話は内密に処理された





私の中でも忘れたと思ってた





いや、無理に忘れようとしてた





思い出さない様に





色んなもので塗り固めて、自分を守ってた





けど今日





攫われて、触れられた時





湧き上がる不快感があった





それが中々消えなくて、





赤羽君に触れられた時、思わず振り払ってしまった















あなた「これが、あった出来事…………」





赤羽「………………」





赤羽君は何も言わない





そうだよね





多分聴きたくなかったよね





あなた「ごめん、こんな話 やっぱり聞かなかった事にして」





私は立ち上がり、その場を離れようとした





けど





グッ





あなた「……………!?」





腕を掴まれ、離れることは出来なかった





掴んだ赤羽君の手は、あの時と今日とは全く違う





嫌じゃ…………ない





赤羽「俺に触られるのは、嫌?」





あなた「え?」





立ち上がり、私の前に立ちまっすぐ私を見下ろす赤羽君





掴まれた手にさらに力がこもったのが分かる





あなた「嫌じゃ……………ない」





赤羽「………………そっか よかった」





表情を緩める赤羽君





こんな話されて気持ちが良いわけないのに





赤羽君は聞いてくれた





知ろうとしてくれた





それがすごく





嬉しかった





赤羽「無理やり話させてごめん」





あなた「ううん 聞いてくれてありがとう」





誰かに聞いてもらえるだけで





こんなにも気持ちが軽くなる














カルマside
赤羽「あなたがずっと、男子に対して距離を取ってること、少し気づいてたんだよ」





あなた「え?」





クラスの中心にいた君だけど





男子とはある一定の距離を置いていた





最初は単に苦手なだけだと思ってた





けど





話を聞いて、繋がった





ずっと相手から触らせなかったんだ





そんな事があれば当然だ





多分、あなた自身はそこまで気づいてないけど





無意識にバリアを張っていたと思う





赤羽「名前呼びも、その為?」





あなた「っ…………うん」





やっぱり





大体の女子には下の名前で気軽に呼ぶ癖に





男子にはそれをしなかった





あなた「そう言う小さいことでも、線引かないと怖かった」





赤羽「そっか でも、渚君は違うよね?」





あなた「渚は………何か他の男子とは違ったから……」





あぁ、渚君には申し訳ないけど





多分男っぽくないって事なんだろうな





君がこんなことを抱えていたなんて知らなかった





けど、聞けてよかった





君の事を知れた





俺の手を嫌じゃないと言ってくれた





だけど





俺は意地悪だから





赤羽「ねぇ、あなたはこのままでいいの?」





あなた「………………」





別に今の状態で悪いわけじゃない





普段から拒否してるわけじゃないし





普通に生活出来てる





けどこれは俺のちょっとしたわがまま





俺は…………もっと君に触れたいし





名前を呼んで欲しいから





赤羽「訓練しよっか 男慣れの」





あなた「え?」





赤羽「試しに俺の名前、呼んでみて」





そう言うと、少し戸惑うあなた





けど





あなた「カルマ………君…」





その名前があなたの口から溢れた時





胸がざわついた





赤羽「もう一回」





あなた「………カルマ君」





何度だって呼んで欲しい





赤羽「明日から俺の事はそう呼んで 分かった?」





あなた「う、うん……………//」





呼び捨ては後にしてくれれば良い





今はそれで





そして俺は次に、あなたの手に自分の手を重ね





指を絡ませた





あなた「っ!? なっ何!?///」





月の灯りしかなくてもあなたの顔が赤くなっているのが分かった





そこまで男慣れしてない訳じゃないと思ってたけど





やっぱり触られるのはまた違うみたいだ





特に急に触られた時は





赤羽「嫌?」





分かってるのに、確認する俺は自分でもずるいと思う





あなた「……嫌じゃない」





予想通りそう言うあなた





もっと慣れてね





あなた





俺が触っても驚かないくらい





俺に触れられるのが当たり前になるくらい





心の中でそんな事を思う俺





こんな事を思うこの気持ちが何か





薄々自分の中で芽生えていたこの感情





分かってるのに、俺は敢えて見ないフリをした





あなたは多分、俺の事を何とも思ってない





だから俺もまた知らないフリをする





あなたが俺を意識して





俺と同じ気持ちになった時





俺は初めてこの気持ちに目を向ける





だから、それまで





あなたに俺を刻みつける





他の人なんて見えないくらい





見る暇なんか無いくらい





だから、覚悟してよね……………あなた














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