ネオンが、まぶたの裏で瞬いている。
甘い匂い。
綿あめみたいな、少し焦げた砂糖の匂い。
ファシナはゆっくりと目を開けた。
視界いっぱいに広がるのは、夜なのに明るい、カラフルな遊園地。
独り言は、やけに澄んだ空気に吸い込まれた。
軽い声。
振り向けば、マエガミがベンチの背もたれに肘をかけている。
観覧車が、ぎ、と鳴った。
止まっているのに、かすかに揺れている。
パケがスマホを振る。
画面は真っ暗。
ピンが眉をしかめる。
遠くから、ぱたぱたと足音。
ホワが、両手をぶんぶん振りながら駆けてくる。
首元に、妙な装置。
ファシナの視線が、彼女の喉元に止まる。
金属製の、色付きの輪。
カチ、と引っ張る音。
低い声。
テツが自分の首を触る。
そこにも同じ輪。
マインドが、楽しそうに笑った。
革命が舌打ちする。
ミセが観覧車を見上げる。
ネオンが、赤、青、黄色と、規則正しく点滅している。
やけに、整いすぎている。
ファシナが言うと、何人かがうなずいた。
ナミが小さく手を挙げる。
スクラが、地面に目を落とす。
足元に、潰れたカラフルな粒。
スヂが顔をしかめる。
ゴキが、無表情に呟く。
その声はやけに落ち着いていた。
イヤが肩を抱く。
その時。
遠くのメリーゴーランドが、ゆっくり回り始めた。
誰も触れていないのに。
きぃ、と軋む音。
ビノが後ずさる。
ドクが静かに言う。
あいに、が震えた声を出す。
その横で、ダーリンがニューの手をぎゅっと握る。
二人は、互いの存在を確かめるみたいに見つめ合う。
少し離れた場所で。
ロッカーが、しゃがみこんでいた。
ファシナが声をかける。
顔を上げる。
目が、妙に澄んでいる。
首輪を指で叩く。
言葉が、喉に引っかかる。
その隣で、エンゼルがふわりと笑う。
うみたが即答する。
エンゼルはネオンを見上げる。
ヤミツキが、ホワイトを顎で示す。
革命ガールが睨む。
ホワイトの笑顔が、少しだけ深くなる。
その瞬間。
どこからともなく、拍手の音が響いた。
ぱち、ぱち、ぱち。
全員が凍りつく。
トゥールが低く問う。
答えはない。
ただ、上空のスピーカーから、かすかなノイズ。
ジジ ...... ジ ......
ファシの心臓が、ゆっくり強く打つ。
舞台だ。
誰かが、見ている。
しうが、くすりと笑う。
トウテツが睨む。
しうの目が、どこか楽しそうに細められる。
その言葉に、空気が変わる。
疑いの匂いが、ほんの少し混じる。
ファシネイターは、全員の顔を見渡した。
知っているはずの名前。
見慣れたはずの表情。
なのに。
今は、誰もが仮面をつけているみたいだ。
ネオンが、一斉に強く光る。
眩しさに目を細めた、その刹那。
スピーカーから、甘ったるい声が流れ始めた。
音になる直前の、呼吸。
ファシネイターは思う。
始まる。
何かが。
遊園地の鐘が、からん、と鳴った。





































編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。