第38話

終活
53
2025/12/24 02:20 更新
病状は安定しつつも、最悪なステージの心臓は
もうどうにでもならない。


私は病室で手紙を書き進めていた。

水月へのもの、誠一郎、あなたの名前2、幸村
そして、キヨ


身体はそんなに動かない中、せっせと右手を動かす。


あの話し合いの後、余命を告げられた。


余命は1ヶ月ほど。

だけどそれはあくまでも目安。






私の現状は包み隠さず、マスコミへ伝えた。
いきなりの引退となってしまったが
仕方ない。


アンはあれから精神不安定になり
北海道へ移ることになって、彼女も
競走馬を引退することになった。


記者会見などできるはずもないし
いつ何時起こるかわからないこの病気




ネットニュースや新聞は私たちのことを
大きく取り上げた。
あなた
じゃじゃ馬姫もここまでか

なんか実感湧かないねぇ。
幸村
まーしかたねぇだろ。
あなた
幸村。どうしたの?
コバルトと調教じゃなかったの?
幸村
あーそのことだけどよ

俺、ジョッキー辞めた
あなた
・・え?


えぇえーーー!!?
ちょっ!まっ!?

嘘でしょ!!?
幸村
嘘じゃねーよ。てか大きな声出すなよ。
個室とはいえ周り考えろって
あなた
ご、ごめん。
幸村
めちゃくちゃ反対されたけど
知らねーよ。明日記者会見する。

お前がいない競馬なんてやってらんねーからよ
あなた
あんた、大胆だねぇ

キヨ達には言ったの?
幸村
言った。

あいつにもめちゃくちゃ驚かれたわ

それと、お前もうちょいでココ退院して
北海道移るんだろ?

俺も一緒に行くから。
あなた


そ、そうなの?
幸村
迷惑?
あなた
迷惑じゃないけど、急展開すぎて
思考が追いつかない。
幸村
まあな。

ま、俺は最後までお前の側にいたいし。
あなた
・・そっか
申し訳ない気持ちはありつつも
私は純粋に嬉しかった。



するとそこに、水月がやってきた。
水月
あなた。体調どう?
あなた
うん。良い感じだよ
水月
そっか。


あのさ。相談してもいい?
あなた
ん?
そう言うと、彼女はパンフレットを
渡してきた。


そこに記されていたのは


あなた
遺骨ダイアモンド?
水月
そう。
もしあなたが亡くなった時
遺骨をダイアにして、私と誠一郎の結婚指輪の
裏面に埋め込みたいなって。

あなたが嫌ならやらないけど
もしやってもいいなら、やりたいなぁーって
あなた
え。私はダイアモンドになるの?
水月
そう。
あなた
いや、全然水月の気の済むようにしてもらって良いんだけど、高くない!?
水月
別に私これくらい稼いでるから平気。

良かったー。でもみんな結構やってるみたいだよ?
私の遺産は全部水月に渡すつもりだったので
その手続きを進めた。

しかし、終活大変。
水月には色々手間をかけさせることになる。


うちのお墓だって誰もいなくなるから
墓しまいもしてもらわなきゃいけないし。


私の遺骨なんてそこら辺に撒いてもらっていいし
北海道の海に散骨してもらおうかなとも考えていた。
幸村
おーその話でまとまったのか
あなた
幸村も知ってたの?
幸村
というか、俺から提案したから。
あなた
そうなんだ
幸村
墓とかも大変だろ?
どうしたら、みんな
お前の側にいれるのかなって

俺も作るつもり
あなた
いや、もし幸村がこれから・・
幸村
ありえねーって。
俺、しつけー男だからよ
お前と一緒にいられないなら
一生独身でいるつもり。
あなた
ほんと・・あんたって(笑)
そこまで想われてるのは
本当に女冥利に尽きる。

次の人生があるのなら
素直で可愛い女になりたい。















そして、私は退院して
北海道へ移った。
レタル乗馬の側に慶次おじさんが
住居を用意してくれていて
幸村と一緒に住んでいる。


おじさんにもお世話になった。



最俺の皆んなも会いにきてくれた。





フジ
なんか信じられねーな
こーすけ
実感わかねぇよ。余命受けてるとか
ヒラ
・・水月のこと
本当にありがとな。
あなた
みんなには、キヨのことに
相談乗ってもらったりして
こちらこそ世話になったよ。
こーすけ
身体しんどくねーの?
あなた
うん。不思議とね。
まあ、緩和する薬とか飲んでるからかも
フジ
そっか。
最俺の皆んなにも
生きているうちに会えるのは
おそらくこれが最後だ。




涙ぐみながら、3人と握手を交わして
別れを惜しんだ。










それから数日後に
キヨとあなたの名前2が北海道に来てくれた。
アンに乗っているのを見て、彼らは驚いた。
キヨ
あなた。体調大丈夫なのかよ
あなた
うん。なるべくアンと走れる時に
走りたいからね。
キヨ
水月も誠一郎、今日からこっちにくるんだろ?
あなた
うん。誠一郎は地方に移籍したし
水月は地元の病院に転職したしね。
余命としては後1週間ちょい。
不思議と体調は穏やかで
たまに心臓が変なこと動きをすることはあるけど
順調に終活は進んでいる。
あなた
あなたの名前2は、ロンドン
いつ行くの?
あなたの名前2
あー、ロンドン行きはやめた。
キヨと一緒になるって決めたから
やっぱり海外に行くとなると
私も寂しいし、キヨも寂しがるしさ(笑)
あなた
そっか。
あなたの名前2
あ、ごめん。

事務所から電話来た。
そう言って彼女が離れていく。
キヨと2人になり、アンのこと馬房に連れて歩きながら
話をする。
キヨ
あのさ。幸村から話聞いてさ
ダイアのこと。

俺らの結婚指輪にも入れてもいい?
あなたの名前2も強く希望してる
あなた
え。

いや、私はかまわないけど

いいの?その・・
キヨ
俺がお前のことを前好きだったとしても
俺らにとっては、家族みたいに大切な人なんだ。

いなくなるのはすげー寂しいし
側に置いておけるのなら、俺らも心強い。
穏やかな笑顔を浮かべる彼に

私はこう言った。





あなた
キヨには本当に感謝してるの
私のことを振ってくれたのを

あれがなければ、呪いはまだ続いていたのかもしれないから。

私たちが付き合って、もし結婚したとしたら
キヨまで短命の呪いに巻き込むことになるし
子供も作ったとしたら、子供にまで苦しませる。

やっと、この長い悪夢を終わらせることが
できる。

キヨはやっぱり、勇者だった。
キヨ
・・本当に俺が勇者なら

お前のことも救ってやれたよ。
ただの人間だし、なんも力になれねー。
あなた
そんなことないよ。
色々あったけど、私はキヨの実況とかみて
笑って楽しませてもらったし、私だけじゃなくて
たくさんの人のこころを救ってる。

誰でもできることじゃない。

紛れもない勇者だよ。

キヨのことを好きになって本当に良かった。
キヨ
俺もだ。

あなたのことをたくさん知れて
好きになって

幸せだった。
あなた
ありがとう
あなたの名前2に悪いとおもいつつ
私は彼の手を取って、手を繋いだ。
この手の温もりも、優しい視線も
私は心から好きだった。


昔も



そして、今も。





まもなく、私は旅立つ。





ずっと言えなかったこの
悪夢の始まりを




やっと言える時が来るのだ。





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