警備員「おい君たち、そこで一体何を……?!」
銃声を聞きつけてやってきたであろう警備員。
快斗は、警備員を混乱させないよう、
あらかじめKIDの衣装を脱ぎ、普段着を身につけていた。
警備員「答えないか?!何だ今の破裂音は?!」
快斗「警察を呼んでください」
警備員「っ……?!」
快斗「生憎、携帯を持っていないので、お願いします。事情は後で」
警備員「……あぁ、もう警察は呼んでいる。そこに誰か倒れているよな?救急車も必要か……」
快斗「いりません。彼はもう……亡くなっていますから……」
工藤新一は、死んだ。
今度こそ、何の偽りもなく。
偽りであって欲しかった。
だが、体はとうに冷たくなり始めていた。
夜風が当たって、尚更だ。
快斗「……お前1人で逝くなよ……宮野志保だって、悲しんじまうだろうが……」
***
《モリアーティが死んだって……どういうことですか?正体は結局分からずじまいだそうで……》
《突然の死……やはりあの詩に、意味が__》
志保「全てが……終わったのね、工藤くん……
あなたも結局はいなくなってしまった……」
私は机に置かれたひとつの封筒を眺める。
今日開けるようにと、彼が言い残していった手紙だった。
丁寧にハサミを口に差し込んで、開封してみる。
ーーーーー
宮野へ
今頃、俺が死んだってニュースが流れているんだろうな……
本当に悪かった。
今までのこと、全て。
正直、俺の事はお前が殺して欲しかった。
俺のせいで、お前を苦しめた、縛り付けた。
宮野との約束を守れなかった俺を、あの世で殴ってくれ。
お前の好きなだけ。
最後に。
さようなら、宮野。
本当にありがとう。
ーーーーー
最後に、当たり前につくような、
"お元気で"といった相手の健康を祈る言葉。
それが無かったのは……
新一が、ずっと死にたいと願っていた彼女を思っての事だった。
志保「貴方は何も悪くない。なんで謝るのよ……
こちらこそありがとう、工藤くん。
私が1番伝えたいのは……感謝の言葉。
ようやく、博士……お姉ちゃん……皆んなのところへ行ける」
そう言うと、宮野志保は“幸せ”そうに微笑んだ。
***
取調室……
快斗は、工藤新一が最期に語った事を、
ゆっくりと記憶を遡りながら、丁寧に説明した。
佐藤「工藤くん……まさか、生きていたなんて」
高木「彼がモリアーティなら……合点がいきます。あんな完全犯罪、凡人が出来るはずもない……」
目暮「……ホームズがモリアーティとは、とんだ皮肉だな……」
そしてもう一つ。
快斗が伝えたかったこと。
佐藤「それで、黒羽快斗くん……君が怪盗KIDだなんて、本当なの?」
快斗「……えぇ、だから彼に呼ばれたんです。
きっと、最期を見届けて欲しかったんでしょうね」
快斗が俯き、苦笑しながら言うと、
目暮が首を横に振りながら応えた。
目暮「いや、工藤くんはそんな人間ではないよ……反面教師として、君に犯罪から手を引いてもらいたかったんじゃないかね……」
目暮警部の言葉を、快斗は正直信じられなかった。
なら素直にそう言ってくれればよかったではないか。
わざわざ死んで分からせる必要も無かったではないか。
快斗「……不器用にも程がありますよ」
高木「いやぁ、意外に彼、不器用なんじゃないかな……僕から見て、だけどね」
高木刑事は明るく言ったが、その声色とは裏腹に
内心はかなり辛そうだった。
快斗「そんな、ですか?」
目暮「あぁ、間違いないよ……死に際、1人が怖いからと、わざわざ君を呼んだりはしない。
呼び出したのには、それなりの訳があったんだよ……まぁ、あくまでも、推測でしかないがね」
快斗「仮にそうなら、アイツは"最後"まで……"最期"まで……カッコつけすぎですよ……っ」
佐藤「黒羽くん……」
死んだなんて……
まだその事実を受け入れたくない自分がいる。
あぁ、泣いたってどうにもならないのに。
快斗は、頬を伝った涙を服の袖で拭った。
そして、全てがどうでも良くなったかのように、
ため息をついて。
独り言を呟いた。
現実から逃げたかった。
否定したかった。
拒みたかった。
快斗「あんな真実なんていらない……
早く……
夢から覚めてくれ」
Tell me a lie🥀𓈒 𓂂𓏸
~𝐄𝐍𝐃~













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。