何も考えずに来ちゃったから上着も着てない
一応7月に入ったけど、まだ上旬。
少しだけ、肌寒い
人がいる?こんな夜に?
私だって人のこと言えないけど、人の気配なんて、さっきまで無かった
声の方向を見ると、1人の男の子
歳は私と同じくらいだろう
透き通るように綺麗な空色の髪
成長段階なのか少し柔くてまろい骨格
何もかもを映し出すような、深く淡い色の瞳
彼の全てを形作る要素が、彼の儚さと美しさを際立てていた
嘘って、どういうこと?
男の子は走って行こうとする
実はちょっと苦手。
でも見栄張っちゃった
男の子は私の手首を掴んで走り出した
私のスピードには程遠く、風を切っているような感覚。
潮風が気持ちいい、なんて思う
浜辺より少し高い場所
バランスを崩したら転んでしまいそうな、ぐらつく足場
下ばかり見ていると、肩を叩かれ、前を見るように言われる。
言われるがまま前を向くと、そこには、見たこともないような美しい景色が一面に拡がっていた。
暗く、何もかもを飲み込んでしまいそうな空
それを反射して、金平糖のような輝く星を閉じ込めた海
優しい漣の柔らかい音
少し煌めく白い砂浜
そして、いつもより大きい月
心ここに在らず。生返事を返してしまう
この壮大な景色から、目が離せなかった
心が痛いほど掴まれているようで。
この苦しさは、何なのだろう
薄々感じてたけど、ちょっとこの人意地悪だ。
そして、寒さが増してきた
意地悪だけど、その分優しくもある人なんだろう
きっと、照れ屋なんだ
想像を膨らましていると、体に暖かさが伝わってくる
優しい、人肌程度の暖かさ
これは…服?
この人の?
あったかい、優しい匂い。
包み込まれているようで、何故か落ち着く
というか…なんか眠くなっちゃった
𓂃𓈒𓏸𓍯
なんで、私家にいるんだろう?
夜、海に行って…
それから?
あのまま、寝た?
𓂃𓈒𓏸𓍯
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
数十分後
♩
放心状態の父の手から滑り落ちそうになった受話器を、母が受け止める
𓂃𓈒𓏸𓍯
ガチャ
これは…収集がつかなそうで迷走してるなうです
どうにか終わらせます!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!