あなたの下の名前side
来るな
逃げろ、逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ!!!
息が苦しい。
お金を使わないように移動は歩くか走るかだけ。
今の所持金は25000円。
貯金と少しのお年玉ではこれで限界だった。
そろそろ日も落ちて来たな
泊まる場所を見つける前に、遠くに行かなきゃ___
ド ン ッ
走るのに夢中になりすぎて、ぶつかってしまった。
不思議そうな顔を見て、ほんの少しの不安がよぎる。
逃げた方がいいか、これでも私はまだ子供だし。
早く逃げよう。
警察にでも連れてかれたらおしまいだ。
やばい、…怪しまれてるかな
逃げなきゃ…。
これ絶対連れていかれるパターンのやつ!
…東京にこんな神みたいないい人いたんだ
……ん、?いやでも
知らない人について行っちゃダメって言うし…
これが作戦、って可能性も無きにしもあらず?
神か悪魔か、よく分からない人はポンと手を叩いた。
にこにこしててすごい良い人そうだな〜…
あ、しまった
と思った頃にはもう遅かった。
どうやら私はいい人オーラに騙されたらしい。
見ず知らずの私を呼び捨てにしたことに驚く。
彼と私の価値観の違いか
息が切れているからか、初めの声はかすれた。
どうして助けてくれるんだろう?
それだけが疑問で仕方なかった。
理由がないならほっとけばいい。
人間なんて所詮そんなもの。
きらきらしてる。
オーラが、笑顔が、瞳が、すべてが。
なんなんだろ、この感情
見たことない世界にドキドキが止まらない。
やっぱりいい人そうだな
良かった。
虎杖さんの手をとって、並んで歩いた。
ひとりぼっちだった時よりも、ずっと輝いて見えた。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!