第143話

知らない人と行動はヤです
2,555
2021/05/30 02:52

ピンポーン。



あなた「山口くーん。来たよー」



現在、夜の7時半すぎ。


うちは、お母さんに用意された洋服で山口家にやってきた。


肝試しに行くと言って、ジャージで行こうとしたら、何故か全力でとめられたのだ。


『可愛い顔してるんだから、もっとちゃんとした身なりで行きなさい』だとよ。クラスの子見てよ、うちより可愛いよ。


と言うわけで、うちの服装は白いトップスに、いつのまに買ってきた黒の半ズボンを履いてきた。


そして、半袖が落ち着かないのでやはり上は部活のジャージを羽織った。


だが、足がかなり露出しているため落ち着かない。


それで下もジャージを履いて行こうとしたら、『何やってんの』とつっこまれたのだけれど。



しばらく待っていると、ガチャリとドアが開いた。


そこに居たのは、すごく優しそうな女の人。山口くんに雰囲気が似てるから、お母さんだろうか。


「あら、もしかしてあなたちゃん?」


あなた「あっ、はい!あの、山口くんは……」


「ちょっと待ってねー。忠ー!」



しばらく待っていると、『忠ー、彼女がきてるわよー』『彼女じゃないよっ!!』と会話が聞こえてきた。


そしてドタドタと足音が近づいてきて、再びドアが開かれる。白いTシャツと黒いズボンを身につけた山口くんだった。


あなた「行こ」


山口「う、うん。遅くなっちゃってごめんね」


あなた「全然ですよ」



2人は並んで歩き出す。静かな住宅地に、2人分のサンダルの音が響いた。



山口「……やば。緊張してきちゃったよ…」


あなた「ですね…やっぱり、やめといた方がよかったかな」


山口「まぁまぁ、せっかくの思い出作りとして、楽しも?」


あなた「ですね…」






学校裏の霊園近くには、ある動物の像が建てられている。


そこが集合場所となっていて、そこにはすでに、30人ほどが集まっていた。


もちろん、そこには日向くん、影山くん、そして仁花ちゃんも。


うちはその3人を見つけると、全速力で駆けていった。



あなた「やほー!」


日向「おぉっ、あなた!」


影山「来たのか」


あなた「はい。……まだ参加者はいるんですか?」


日向「いや、これくらいらしいぞ。さっき聞いてきたんだ!」


山口「ツッキーは?」


谷地「私たちはまだ会ってないよ。来ないのかな?」



来てないのか……ちょっと残念だな。


シュンと眉を下げると、山口くんがひょこりと顔をのぞいてきた。


山口「ツッキーが居ないとイヤ?」


あなた「え?そっ、そんなことないですよ!」


ぶんぶんと手を振って否定する。







山口「嘘つき____________」






あなた「………え?」





山口「え?あっ、ううん。ほら、主催者の人が呼んでる。行こう?」


あなた「う、うん」




『嘘つき』。


彼はたしかにそう言った。


いや、でも____________。



……やっぱ分かんないや。










〈今回の肝試しのルール〉


・この霊園の裏の山を一度登り、帰って来れたらクリア。


・男女で1組になって行動する(何で?)。このペアはくじ引きで決めること。


・ペアに一つ、懐中電灯が渡される。


・この山には、仕掛け人がいる。どこにいるかはお楽しみ☆(は?)



肝試しは、そんなルールだった。


男女1組でペアかぁ…できればバレー部の人がいいな。慣れてるし。


慣れてるって言うか、それ以外の男子と喋ったことほぼないだけだけど。



「女子はくじはこっちで引いてくださーい」



あなた「ひっ、仁花ちゃん、どうしよ…」


谷地「私2人の面倒見るために来たからなぁ……」


お互い恐る恐るくじを引く。


うちのところに書いてあったのは、12番だった。


12番か……だれだろ。お願いだからバレー部(ry



男女ともにくじを引き終わり、1番からペアが決まっていく。


中にはカップルがペアになったとこもあり、大変盛り上がっていた。


そして、仁花ちゃんは運良く日向くんとペアになったのである。日向くんも怖いの苦手っぽいけど、大丈夫かな…。


山口くんはクラスの子となっていて、ちょっとオドオドしていたし、影山くんは眼光が鋭すぎて相手の女子に怯えられていた。



もう分かるだろうか。



そう、うちは運悪く、知らない人とペアになったのである。


知らない人というか、名前しか知らない人。



確か名前は……赤城くん、だったかな?下の名前は忘れたけど。


なんか男子テニス部の期待の一年生!とか言って話題になっていたことがある。


噂では、1週間に1回は必ず告白されるほど人気なのだとか。



よく知らないけど☆



赤城「こっわー。君、怖いの得意?俺苦手なんだけどさ」


あなた「あ、えっとー……自分も苦手です……あの、兎和って言います、えっと、」


赤城「怯えないでよー笑。そんな怖いかな?俺」


うーんと悩みながら黒髪に入った赤のメッシュをいじる赤城くん。


ぽんぽん話を進めていくのについていけないが、根は良い人のようだ。




赤城「……あ、俺らの番だ。行こ」


あなた「……はい」










プリ小説オーディオドラマ