ガクくんが部屋を出て行った後
一人残されたリビングがやけに
広く感じられる。
呟いた声は誰にも届かず
静寂の中に溶けていく。
掴めなかった彼の腕の感触が
まだ手のひらに残っているような
気がした。
ソファに再び座り込み
膝の上で両手を握りしめる。
どうして、彼は僕から離れていくのか。
何か悪いことをしてしまったのだろうか。
頭の中は疑問と不安でいっぱいだった。
一人になった部屋で
時計の秒針の音だけが
やけに大きく聞こえる。
さっきまでの穏やかな空気が嘘のように
冷たく張り詰めた空気が漂っている。
ぽつりと呟いた言葉は
誰にも答えられずに宙に消える。
膝の上で握りしめた拳が
わずかに震えていた。
しばらくして玄関のドアが開く音が
聞こえる。
ガクくんが帰ってきたのだろうか。
さっきまでの出来事がフラッシュバックし
心臓が早鐘を打つ。
リビングの入り口を見つめながら
固唾を呑んで彼の帰りを待つ。
怒っているだろうか、それとも…。
最悪の想像が頭をよぎり
顔から血の気が引いていく。
いつもより少し小さな声で
少しだけ長い間があってから
玄関の扉が閉まる音がする。
そしてゆっくりとした足取りで
リビングに戻ってくる。
その顔は少し赤く
目が少し腫れぼったいように見えた
ガクの顔を見た瞬間、息が止まった。
赤い顔、腫れぼったい目。
泣いていたのか
それとも外で何かがあったのか。
考えられる可能性が頭の中を駆け巡り
一番最悪の想像が脳裏をよぎる。
声は震えておらず
むしろ低く落ち着いていた。
だがその瞳は不安と動揺で揺れていた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!