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第1話

この思いは測定不能です
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2026/01/01 14:31 更新

ピピピピピ…

「んぅー...うるさい...」

ベッド横のサイドテーブルに置いてある目覚ましがけたたましく鳴る
睡眠を妨害されたソウタは勢いよく目覚ましを止めた
二度寝を試みたが、すっかり目が覚めてしまった
ソウタは顔を洗おうと体を起こそうとすると

「あれ...」

体を起こした瞬間起こる軽い倦怠感と喉の痛み
そういえば昨日からまだ夏なのに異様な寒気がしていた
昨日は気温が珍しく低く身体が冷えただけだろうと自分に言い聞かせて早く寝たが、なんと風邪をひいていた
風邪を引くなんて一体いつぶりなのだろうか
重たい体を引きずりながら引き出しの中にしまってあった体温計を取り出す

「頼むー、せめて37℃ぐらいで...」

そんな願いも虚しく、表示された体温は37.6℃
思ってたよりも熱があり、思わず苦悶の表情になった

「嘘だろ...」

しかし今日は練習がある
ここのところ別の仕事が立て続けにあり、メンバーに会えるのはこの日だけ
次の日からまた撮影で、みんなと練習出来るのは早くて1週間後になってしまう

『みんなに会いたい。みんなと踊りたい』

みんなに会いたい一心で重い体を引きずり朝の支度をする
せめてパンだけでも食べようとしたが胃が受け付けてくれなかった
冷蔵庫にあったポカリを一口といつ買ったのか分からない風邪薬を水で流し込んで練習場所に向かった

ここからは地獄の連続だった
今日は8月
夏の真っ盛りだ
しかも今日は太陽がうるさい程の快晴

『なんで今日に限ってすんごい晴れてんだよ。昨日まで雨だったじゃん...クソッ、眩しくて頭痛ぇ...キャップ被ってくれば良かった』

上からの照りつける太陽の熱と光、下からのアスファルトの熱と太陽の反射した光のサンドイッチで出発から5分でソウタはボロボロだった
特に白い地面のところでは眩しすぎて目もまともに開けなかった

『やっべー...頭痛のせいで吐き気してきた...』

痛む頭を抑え、なんとか地下鉄の駅に到着した
いつもなら数分で着く道が今日はものすごく長く感じた
日差しが当たらなくなったことで頭痛は少しだけ落ち着いた
時刻表を見るとまだ電車がくるまで10分ほどある

「ちょっと休憩...」

体力を回復するためにホームのベンチに座ったら眠気が襲ってきた
しばらくウトウトしていたらいつの間にか電車が来ていた
しかも車掌が飛び出しがないか確認しており、もう出発しようとしている

「うわ!まじか!」

全速力で走り急いで電車に飛び込む
なんとか間に合ったが不幸にも座席は全て埋まっており座ることは出来なかった
そのためドア付近の壁に寄りかかり、荒れた息を整えようとした

『うっ...!!!グッ...!!!』

急に動いたせいでさっきまで収まってた頭痛と吐き気がぶり返してきた
冷や汗が止まらない

『まじぃ、吐きそ...それに寒い』

路線図を見ると到着まであと4駅
大丈夫、俺なら大丈夫と自分に言い聞かせ、目を瞑り目的地まで耐えようとした
自分で額や首元を触ってみると朝よりも熱が上がっているような気がした
薬はあまり効いてないようだ

あと1駅になったころで更なる不幸がソウタを襲った
大きな駅に着いたのか人が車内に大勢入ってきた
所謂すし詰め状態である
熱でフラフラで、しかも乗車人数が増えたことで電車の揺れが激しくなったような気がした
揺れるたびに胃からせり上ってくるものを必死で飲み込む
その度に生理的な涙が溢れてくる
鬱陶しいほど甘い香水の匂いや汗の匂いが混じり、吐き気と目眩がさっきよりも強くなってきた
そのせいで視界は揺れ、さっきは視界の端が狭窄してきて倒れそうになった

人が多くて座れず15分ほど立ちっぱなしでソウタの体力はほとんど残っておらず限界に近かった
なんとか目的の駅に着いてもソウタはホームからしばらく動くことが出来なかった
まだ鼻の奥にあの匂いがこびりついていて、また嘔吐いてしまう

『ハァ...ハァ...。早く外の空気を吸おう』

いつもと同じ時間なのに今日は永遠と感じた
重い体を叱咤し、地上への階段を登る
屋根から漏れる太陽の光で一瞬気絶しそうになったがなんとか階段を登り切った
思わず深呼吸をした
外の空気を目一杯吸えたことで少し気分が楽になった
深呼吸を終えると、木陰のベンチが見えたので少し休憩しようと腰掛けた
ちょうど太陽の光が葉で遮られ、ほんの少し涼しい
目を瞑り5分だけ休憩する

「よし...あとちょっとだ...みんなに会える、ヘヘ...」

もうソウタの体は限界だ
今ソウタの体を動かしてるのは「仲間に会いたい」の一心だけ
歩く度に左右に体が揺れる
きっと通行人にギョッとされてると思うが、今のソウタにそんなことはどうだってよかった

やっとの思いで事務所に着く

視界が揺れる
倒れそうになったがギリギリ壁にもたれかかることができ、なんとか転倒は避けれた
ソウタの視界はもうぐにゃぐにゃで白と黒の世界だけになった

「...ハハ...」

この状態が初めてで楽しいのか思わず笑ってしまった
まるで宙に浮いているようだ
楽しい
もうソウタは自分がどこを歩いているか分からない状態だった
壁つたいで歩いていると、みんなの笑い声が聞こえてきた

みんなの楽しそうで元気な声が聞こえて微笑む

やっと会える

ドアノブを掴み扉を開けた

「みんな、ただいま」

先程の笑い声は嘘かのように、ソウタを見た瞬間辺りが静まり返った
その違和感にソウタは顔を傾けた

「あれ?みんなどうしt...」

言い終わる前にソウタは膝をつき前方に倒れた
額を床に強打したがもう痛みなんて感じなかった
霞む視界で見えたのは倒れるソウタを支えようと走ってくるマナトと何処かに電話をするレオの姿

みんなの声が聞こえるがなんて言ってるのか分からない

『そんな悲しそうな顔しないでくれよ、マナト。あぁ...。みんなの顔見たかったのにな...』

そこでソウタの視界がブラックアウトした

──────────────

目覚めるとソウタは辺りが漆黒の空間に漂っていた

「あれ?」

この状況に戸惑っているとどこからか声が聞こえてきた

『ソウタってまじダンスしか出来ないのな。そんなんで将来大丈夫なの?』
『この成績ではちょっと希望する進路は難しいかと...』
『ダンスで食べていく?無理に決まってるじゃない。甘ったれたこと言ってないで勉強しなさい』

過去の記憶が蘇ってくる
思い出したくない、蓋をして忘れていたはずの映像がソウタの周りに流れていく

『お前がいると正直言って迷惑なんだよ』
『お前ばっかセンター取りやがって』
『心の中では俺らのことを馬鹿にしてんだろ?調子に乗るのも大概にしろ』
『今度の大会選抜でわざとミスしろよ?わかってるんだよな?』
『ダンスシューズがどこって?あー。そういえばトイレにあったようなw』
『汚ぇーww離れろよw』
『アハハハハハハハハハ』

やめろやめろやめろ

これ以上俺を苦しめるのはやめてくれ

━━━━━━━━━━━━━━━

「ッハ!!...」

目が覚めると知らない天井だった
白い壁に白い天井

『あ、これアニメとかによくある展開じゃん』

病室に俺はいるのだろう
自分をよく見ると服はいつものTシャツから入院着に変わっている
視界を上げると点滴が左腕に刺さっていた
練習場所までついたがその後の記憶がない

『迷惑、かけちゃったな』

嫌な夢も見て下がった気分をあげるため窓を眺めた
外はもう既に暗くなっていた

『一体俺は何時間寝てたんだ...ん?』

右手が何か温かい柔らかいものに包まれていることに気づいた
目線を下げるとマナトがソウタの右手を枕にしながらながら寝ている

『フッ...』

マナトの行動に思わず笑みがこぼれた
左手でマナトの髪の毛を触れた
マナトの髪はサラサラでしっとりしていて、まるで絹糸のようだ

『最近MVの撮影があるって髪を青色に染めたって言ってたな。こんな感じなんだ。青空みたい。綺麗だ...』

マナトを起こさないよう注意しながら髪を堪能する
しばらく触っていたら、くすぐったかったのかマナトが起きてしまった

「「あ...」」

お互い見つめあってしばらくフリーズした

「マナト、おはよう?」
「ソウタ!!!」

ソウタの名前を呼ぶやいなやソウタを力強く抱きしめる
一瞬ソウタは何が起こったか分からなかった

「ちょっ!マナト?」
「ソウタが目覚めてくれて良かった!本当に良かった!!もしあのままずっと目覚めなかったらって考えて俺寝れなかったし、食事も喉を通らなかったんだからな!!」
「え?どういうこと?」
「お前倒れてから1日目を覚まさなかったんだよ!!」
「え?!1日?!」
「そうだよ!!しかも熱40℃超えてたし!!頭流血するわ、鼻血出るわ。ソウタの馬鹿!!ていうか体調が悪かったこと、なんで俺に言ってくれなかったんだよ!!」
「え」
「心配したんだからな!!この馬鹿!!」
「痛い痛い!肩痛いって!そんな揺らさないで!」
「あ、ごめん!てかソウタ熱は?頭は?痛くない?ちゃんと見える?はい!これ指何本に見える?こんな美しい顔に傷が顔に残ったらどうするんだよ...」

『え、マナト一体どうしたんだ...?なんだかいつもと違う...』

そんなことをうちに他のメンバーの声が扉越しに聞こえてきた
それに気づいたマナトがソウタから急いで離れる

「マナト、ソウタの様子はどうだ?」

レジ袋を下げたレオと他メンバー4人が入ってくる

「あ...おはよう...」

「「「「...あ...」」」」

その後はジュノンが看護師を呼びに言ってくれた
看護師が来る間ソウタは無理して練習に来たこと、周りを頼らなかったことをみんなにとことん怒られた
般若のような顔で4人に詰められ、シュンとするソウタ
もう無理をせず、何かあったら周りを頼ることを誓わせみんないつもの表情に戻った

しばらくすると医師が病室に入ってきて色々なことを説明をしてくれた
右手が捻挫していることと、倒れた拍子に頭を打ったため1週間は検査入院すること
その説明の時、ソウタはまた練習できなくなることにショックを受けてその後医師が何を言ってたかあまり記憶出来なかった

ショックを受けて落ち込んだソウタの頭にレオが優しく手を置き撫でた
それが嬉しくてくすぐったくてソウタは微笑んでしまった
その後は面会時間までみんなで楽しくゲームや雑談をして遊んだ

「次いくぞ」

カードの束から1枚カードを引き、中央に置く
カードに書かれているのは体が黄色の三角でウインクをしている生物の絵
リュウヘイが叫ぶ

「トンガリk「失礼します」」

部屋の扉が開き、面会終了時間が近いことを看護師が知らせてくれた
病室の時計を見たらもうすぐで20時になるころだ

「もうそんな時間か」
「また明日も来るからな!」
「ゆっくり休みなよ、ソウタがいないとダンスがつまらないぜ!」
「早く元気になって一緒に踊ろうな!」

「おう!みんな来てくれてありがとうな!」

各々別れの挨拶をして病室を出ていった
みんなが居なくなった病室は先程とは比べ物にならないほど静かだ

『みんな俺のこと必要としてくれてた...。良かった、嬉しいな...』

久しぶりにみんなと話せ嬉しかった
さっきみたいな時間がずっと続くことを願いながら、ソウタは大きな欠伸をした

『遊んで疲れたのかな。もう一眠りするか』

そう言ってカーテンを閉め、横になろうとすると病室のドアが開く音が聞こえた
カーテンを開けるとマナトが立っていた

「お、マナト。どうしたんだ?」
「忘れ物をしてきた」
「忘れ物?」

ソウタは忘れ物がないか辺りを見渡すが、忘れ物らしきものは見つからない

「見間違いじゃないのか?マナト...マナト?」

顔に影が落ち、見上げるとマナトがソウタを見ていた
あまりにもマナトの表情が真剣なものなため、ソウタは少し戸惑ってしまった

「...マナト?...」
「忘れ物...」
「え...」

そう言うとマナトがソウタの包帯が巻かれた額にキスをした

「それじゃあ、おやすみ...」

そう言うとマナトは病室を出て行った
いきなりのマナトの行動にソウタは何が起こったか理解出来なかった

「マナトが俺の額に...キス...ふぇ?」

マナトのキスを思い出し、ソウタの顔はヤカンが沸騰出来るぐらいに熱く真っ赤になったと思う
自分の鼓動しか聞こえない
体が熱く燃えてるようだ

「ソウタさん、こんばんは。体調はどうでしょうか?」

あまりの急な出来事に布団の中でフリーズとしてると看護師が部屋に入ってきた
体温を測るらしい

ピピピピピ...

表示された体温は「Error」
すると体温を計った看護師が血相を変えて病室から出ていった

この時の体温は過去最高だったに違いない




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