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第1話

愛だと思うんだ
242
2021/05/07 00:45
記録―2007年8月
    ■■県■■■市(■■マンション跡地)
 任務概要
 推定1級呪霊の受胎を確認。
 高専3年1名、高専2年2名派遣。近頃活発だった■■宗教の信仰による特級呪霊と断定。

 内一名 死亡。頭部損壊による即死。
私
おはよー!
元気に挨拶した声に教室内の誰も返してくれない。
あれ?私、なにかしたっけな?
いつもなら返してくれる筈なのに。そう思って皆を見ると、みんながみんな、そっぽを向いている。
新手のドッキリかなにかだと思い、その日はそのまま1日を終えた。

次の日。私の机に花瓶が置いてあった。幸い、実家が花屋だから、花の種類には詳しかった。花言葉は花の種類も多いし色々だから全て忘れてしまったけれど。
確か…ローダンセ、と…エーデルワイス、それとジニアの花、の中にアンバランスにひとつだけ差されているのはクロユリだ。机に花瓶とは…虐めだろうか。
虐められるようなことをした覚えは…あるな。五条のプリンを食べたり、夏油の前髪で遊んだり…硝子は、なんだろうか。煙草を吸っているのを叱ったから、とかか?
でもそんな些細なことで怒るような奴等じゃなかったんだが。

次の日も、その次の日も、話し掛けても答えてくれなくて、しょうもないギャグを言ってみてもツッコんでくれなくて、何をするにしてもひとりだとやっぱり退屈で。
数週間後、まるで私が居ないもののように思えてきた。
私
…おーい、私はここにいますよ
ぽろっと口から溢れ出た言葉に3人が此方に集まって、抱き締めてくれて、暖かくて、やっぱり生きててよかった。
3人と人生ゲームなんかして遊んだり、五条と一緒に夏油の前髪で遊んだり、硝子と五条のプリンを一緒に食べたりした。
楽しい日常に戻って、3人が居ないのは寂しいな、って、話したりもした。その時3人はなんて言ったんだっけ。












あれ、そんなこと本当に話したかな。





嗚呼、そんなのは私の幻に過ぎないんだと分かった。

本当はなにも話し掛けてくれなくて、抱きしめてくれなくて、ずっと寒くて、寂しくて、淋しくて、遊んでくれなくて、話せなくて、…それはきっと、死に等しい苦しみで。ぽろり、ぽろりってなにかが私から溢れて。

私に話しかけて、私を見て、私と遊んで。
日に日にそんなことしか考えられなくなっていって。

どくん、どくんって心臓が脈打ってる感覚がして。
目の前が黒く塗り潰されてる気がして。
私がここに居ることを認めて。

私から溢れてるものとみんなに貰うモノがなにか、
私
ねこはいます、よろしくおねがいします
それはきっと______

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