師匠のレッスンゴールの合図が出る
今日、話さなきゃ
あぁ、優しい人だな
お金は受け取って貰えなくても
私の気持ちをきちんと察してくれた
離れたくないなぁ
好きだなぁ
でも、好きだからこそ
師匠の顔が強ばる
そりゃそうだよね、勝手なんだもん
そう、優しいあなたならきっとそう言ってくれると思ってた
だけど私だって18歳になるんだ
もう大人のように、貴方が断れない内容だって考えてきた
ほらね
他の人を巻き込むならば
貴方は納得してくれる
フルートを片付けて支度をしている間も
師匠はじっとこちらを見つめて動かなかった
最後なんだから、少しでも長くいたい気持ちが
ふつふつと私の中にはあって
いつもより丁寧に片付けをした
気持ち?弟子としてだろうか
それともやっぱり迷惑だと思われてたのだろうか
迷惑だったのか
私ったらもっと早く気付けば良かったのに
あぁ、終わっちゃった
終わらせちゃった
好きだったのに、大好きなのに
本当は、まだ教えて貰いたかった
本当は、離れたくなかった
本当は、伝えたかった














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!