あなたの推し・好きな人の名前side –––––
そう言って家を出た瞬間、あいつの“いってきます”という声が聞こえた。
あいつがそう言ったとき、妙に声が小さくなった気がして。
それが嫌で、ついそれを指摘して。
そんな冷たい返事しかできない自分に、腹が立って。
でも、こいつと学校まで行けるのもムカつくくらい嬉しくて。
またつい、からかってみたりして。
そう言って笑うお前が、眩しい。
それぞれ自分の教室に入ってからも、落ち着かない。
小さい頃の記憶が次々に浮かんできて。止めようとしても、止められない。
こんなことでため息をつくなんて、俺らしくもない。
なのに。
そう否定はしてみたものの。
あなたを好きだという気持ちは、時間が経つにつれて…俺の中で、増え続けていた。
あなたside –––––
あれから1週間が経って。
それでも、あなたの推し・好きな人の名前との関係は変わらなくて。
まぁ、何年も頑張って変わんないんだからそんな短い期間で変わるわけないけど。
そんなことを考えながら、私は適当に毎日を過ごしていた…あんなことが起こるとは知らずに。
…それは唐突な出来事だった。
帰りの会、お知らせで何故か黒板前に呼ばれて。
私はその言葉の意味を、数秒間理解できなかった。
そう言って、差し出される手。
正直言って、私にそんな気持ちは微塵もない。
だって私は、あなたの推し・好きな人の名前が好きだから。
最悪なのは、ここは教室で、みんなの前。
この空気の中、断らなきゃいけない。
そう思うと、なぜか声が出なくて。
私の頭の中は真っ白で。
“どうしよう”としか思えなくて。
そんなとき。
あなたの推し・好きな人の名前の声が、聞こえて。
何故か廊下から、そう話しかけてきて。
私は困惑した。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。