仕事帰り。
スーツ姿にコンビニのレジ袋。
疲れた頭の中とハゲた頭。
信号待ちで、ふと考える
別に本気でそう思っているわけではない
気の合い私を気にかけてくれる嫁に、私が傷つくからと反抗期の姿を見せない娘。
周りの人間に恵まれているし、ただの愚痴だ
信号が青になり、一歩踏み出す
眩しい光
大きな音
なぜか冷静
きっとアニメや漫画、ゲームでこの手で転生する主人公達を見てきたからだろう
走馬灯も浮かばないが、ただ最後に思い浮かんだのは
そんなあまり大したことのない後悔
視界が白くなる
周りの慌てる声や日常の音が消える
天蓋付きのベット
美しい装飾が施された知らない天井
知らない手
小さくて、白くて、まるでか弱い女性のような指だ
一度立って近くにあった姿見を見る
声が違う。
鏡を見る
そこには、どう見ても「マジカル♡ドキドキ♡学園ラブ&ビースト」の世界のあなたのカタカナの名前・あなたのカタカナの苗字だった
でもその中身は52歳の公務員だ
静かに言う
誰も答えない
窓からよく見える庭には見覚えのない花が咲いていた
赤く大きなダリア。
その足元で小さなニゲラが風に揺られている
名前も知らないはずなのに、なぜか惹きつけられる
華やかで、強く見えるが、不安定で簡単に枯れてしまう繊細な植物
誰に向けた言葉かわからないが、小さく呟く













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!