これはもう、どうしようもなかった。
物理的に引き離された僕たちが、幸せになれるわけないのだと知っていた。
会いたくても、会える距離じゃない。
連絡を、とりたくても取れない。
名前と、顔と、声と、香りと、笑い方_______________。
僕たちはお互いについてそれっぽっちの情報しか、持っていないのだ。
それでも君は好いていてくれると、ずっとずっと信じてきた。僕も自身のその気持ちを疑いはしなかったんだ。
僕らは青い空だけを見た。
綺麗なものだけを自分の目に映した。
何も知らない子供のままでいたかった。
僕のクセは君を想って星を見上げることだ。
君も見ているだろうかと、無邪気に問えた僕。そして、その行為になんの感情も抱かなくなった夜。
終わりを見つけてしまったことにとても胸がいたんだ。君も同じ気持ちでいて欲しいと願ってしまってさ。
だから僕は僕たちの儚い関係と、幼さがゆえの残酷さと、縮まることの無い距離を無条件に受け入れるしか無かった。
君がくれた_______________いや、君のハーバリウムはまだ捨てられないままなのに。
アイロニーだと、泣けずに笑う。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!