中学2年の夏休みのある日。
毎年のごとく、あるいは毎日のごとく蝉が鳴きわめき、太陽の光が燦々と照り輝いている。
そんな中で私・キズナがいるのはとってもとっても硬いアスファルトの道路。
辺りに日陰は無く、そのせいかいつもより一層暑く感じられる。
勉強用具を詰め込んだ手提げ袋を持ち、汗だくでうちわをパタパタと扇ぎながら、親友・ソウタの家へと向かっていた。
もうひとりの親友・イオリもソウタの家へ向かわされているらしい。
ソウタいわく3人で宿題をしたいそうだが…
こんな暑い中での外出は御免だ。
おまけに彼の家は私の家から歩いて20分もかかるほど遠い。遠すぎる。
そもそも何故図書館ではなくアイツの家なのか。
頼むからちゃんと天気予報の気温を見てくれ…
__________やっと着いた。
謎の達成感と真夏の空の下を歩き続けた疲労を感じながら、チャイムを押す。
ピンポーン
しばしの間とともに勢いよく扉が ガチャッ と開き、Tシャツに短パンという出で立ちの親友が立っていた。
その言葉に僅かにカチンときてしまう。
そう言った上になんと微笑まで浮かべて私を見つめてくる。
マジでなんなんだコイツ。
ここまでくると怒りを通り越して呆れになってしまう。
いつものことだが。
そう言いながらソウタを押しのけ玄関に入る。
「俺はまだ入って良いとは言ってないぞ!」と喚いている彼を無視して靴を脱ぎそそくさと中へ。
何度も訪れているので部屋の位置は分かっている。
いつものようにリビングの扉を開けた。
いつもなら「いらっしゃい」と出迎えてくれるソウタのお母さんがいない。
少々驚いた私をよそに、私の思ったことを読んだかのように彼は背後からそう言った。
ニヤッと笑いながら言ってくる彼に対し私は呆れてそう返す。
その言葉と同時にけたたましくチャイムが鳴った。
なにやら怒鳴っている。
ソウタは「座って待ってなよ」と私に言い残し再び玄関へ行った。
お言葉通りに座って待っているとふたりが一緒にリビングに入ってきた。
とソウタに圧をかけている。
イオリに続いて冷蔵庫に向かった。
各自アイスを取り出しかじりつく。
ひんやりとした冷たさが気持ちいい。
アイスをかじりながらソウタがそう問いかけてきた。
イオリの言い方に思わず吹き出してしまった。
その言葉に私とイオリは数秒固まった。
イオリが大きなため息をつく。
よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりの顔でソウタが口を開いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。