第5話

4.過去
37
2026/03/17 14:39 更新
中学3年の夏、小学生を庇って、トラックに跳ねられた。
背中に大怪我、頭を強打、1ヶ月近く意識不明。
そんな状態だったけど、しばらくしたら目を覚まして、その日のうちに色々検査をして、1週間入院して漸く退院した。
俺が庇った小学生は、今も元気にやっているのだろうか。
ウォルピスカーター
……?あれ?啓、その背中の傷どったん?
雨宮啓
雨宮啓
んぁ……これか
ウォルピスカーター
うわ結構広い範囲じゃん痛そ〜……
ウォルピスカーター
古傷?
雨宮啓
雨宮啓
うん……中学三年の夏の時の
ウォルピスカーター
そんなこと細かく覚えとることあるぅ?
雨宮啓
雨宮啓
……覚えとるやろ、そりゃ
小学校5年生の時。
信号無視のトラックに跳ねられそうになった俺を、庇ってくれた中学生くらいの男子がいた。
背はすらっと高く、細身で、綺麗な顔立ちをしていて、毎朝見かける男子だった。
いつもは落ち着いた表情の彼が、この時ばかりは焦った表情をして、俺を歩道側に突き飛ばしてくれた。
そのお陰で俺は無傷だったが、彼は、血の海に溺れていた。
その後のことはよく覚えていない。
彼の横で泣きながら彼の手を握っていたことだけは、朧気に覚えている。
彼の怪我は、背中と頭、特に背中が酷かったらしく、広い範囲に跡が残ると聞かされた。
毎日のように彼の病室に通った。
普段かけていたメガネがサイドテーブルに置かれ、包帯だらけの彼の姿はどこか別人のように見えた。
彼が退院するその日、俺は怖くて行けなかった。
彼は、俺を責めるかもしれないと思ったから。
結局その後連絡もなく、接点もなかった。
ウォルピスカーター
ん……?
雨宮啓
雨宮啓
ん?どした?
ウォルピスカーター
……お前今、中学3年の夏って言ったよな?
雨宮啓
雨宮啓
うん
ウォルピスカーター
てことは俺が小学5年のときだ
雨宮啓
雨宮啓
そうなるな
ウォルピスカーター
その年の夏さ、俺……中学生助けて貰ってるんだけど
雨宮啓
雨宮啓
……え?
ウォルピスカーター
信号無視のトラックに跳ねられかけて……
雨宮啓
雨宮啓
……え、あれ、お前やったん?
ウォルピスカーター
……た、ぶん……
ウォルピスカーター
え……うわ……痛そう……ごめん……
雨宮啓
雨宮啓
なんで謝るん
ウォルピスカーター
いやだって俺のせい……
雨宮啓
雨宮啓
いや元はと言えば信号無視しとった運転手が悪いやろ
ウォルピスカーター
それは、そう……
雨宮啓
雨宮啓
別に後悔しとらんけん謝る必要なかばい
ウォルピスカーター
え?
雨宮啓
雨宮啓
そりゃ受験生の夏をほぼ1ヶ月入院しとったのはアレやったけども
ウォルピスカーター
う"……
雨宮啓
雨宮啓
……そのお陰でお前が生きとんやけん
ウォルピスカーター
……うん
雨宮啓
雨宮啓
運命ってやつたい
雨宮啓
雨宮啓
知らんけど
ウォルピスカーター
いや知っとけよ

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