時は少し遡り、gnmsさんが捕まった頃。
そんなことを呟きながら廊下を歩く。
3階の廊下の先には、大きいとも小さいとも言えない程の大きさのベランダがあり、植木鉢に居座る植物達が置かれていた。
壁一面が窓なため、差し込む太陽の光が屋敷の中を照らす。
...綺麗、ってあの髪は......
大きい窓の端に見えるパステルカラーの緑。
私は窓に触れ、魔力を流し込む。
ベランダと屋敷を隔てる窓は、ドアがない代わりに魔力を流すことで窓が開くのだ。
ベランダから空を見上げ、風に揺られていたcykさんは咄嗟に私に気づいたようで驚きの表情を浮かべた。
私はcykさんに走って行く。
ベランダは行き止まり、流石に勝ちましたね!
私が手を伸ばした瞬間cykさんは人間のできるであろう1番勢いのあるくしゃみをして見せた。
cykさん!?
もうなんか人間の限界を超えてません??
凄すぎて捕まえれなかったんですけど!?
勢いは止まらずcykさんはそのまま額を地面に打ってしまった。
うぇーんうぇーんと泣くcykさん。
この状況をkkさんに見られたら確実にやられるぅ...ッ!
私は赤くなったcykさんの額に手を当てた。
私の固有魔法『雪』には殺傷能力なんて無い。
その中でもさらに弱いもの。
cykさんの額に触れる手の平が冷たくなるのを感じる。
なんだか照れくさいですね...//
それはそうと、えーと、znさん?聞こえますか?
3階のベランダにてcykさんを確保しました!
私は心の中でznさんに報告する。
こう言う感じ...なんだか慣れませんね......
私はcykさんの手を引きながら廊下へと足を踏み入れた。
その時だった。
"お願い....来て..."
"銀髪の子...緑髪の子..."
男性とも女性ともわからないような、
幼子とも大人でも無い、そんな声が頭に直接響いていた。
"深海のような髪の子も来てくれなかった..."
"...来てって、何回も何回も..."
"私達は助けようとしてるのに..."
"もう時間がないの..."
"こうなったら..."
悲しくも覚悟を決めたような声が届いた時。
一瞬にしてものすごい風が吹き始め渦となり、
私たち2人を台風の目だと言うようにして囲んでいた。
znさんッ!znさんッ!!!!!!
頭の中で助けを求めても返事はない。
立つだけでも精一杯の中、
詠唱なんて出来っこないだろう。
cykさんは私の腕をガッチリと掴んだかと思えば、
目を細めてタイミングを伺っていた。
体を捻り回転をつけ私を思いっきりぶん投げる。
cykさんは風にできる刹那とも言えるわずかな綻びを見分けたのだ。
それは大いなる風を退け、
私を風の牢獄から解放してくれた。
そのままの勢いに私は壁に激突した。
体の痛みなんて感じている暇はない。
今すぐ詠唱してcykさんを!!
"なんで邪魔するの...!!!!"
"...いや、そういうこと?銀髪はあいつ側なの......?"
"だから銀髪を私たちに近づけさせないために...、"
"そうだったのね!!!"
"銀髪...あんたが...あいつの仲間ねッ!!!!!!"
泣き叫ぶように言うそれは、敵意を私に向けた。
私がそう言いかけた時だった。
渦になってcykさんを囲っていた風が形を変え、壁のようになった。壁となった風はベランダに押し出すように突き抜けた。
それはまるで__
私の背中がドンと押されたみたいだった。
大いなる風の前では人間の力なんてなきに等しく、私はベランダの柵を超えてしまった。
あのmmさんでさえ窓から飛び降りた後着地できないって叫んでたのに私に着地しろと!?
無理があるでしょうよ!!(第五話)
cykさんが飛び込んできたかと思えば、片手でベランダの柵を掴み、片手で私の手を掴んでいた。
いわゆる絶体絶命大ピンチってやつ。
下を見るとそこは草原で衝撃を吸収できるとは到底思えない。
落ちたら、即OUT...。
"緑髪の子よ...銀髪を離せ......!!"
"あなたが銀髪をあいつ側だと言ったじゃない...!"
"でも私たちの招きに銀髪を弾いた..."
"そう言うことじゃない!!!"
"薄々感じていた...この寮にはあいつ側......"
"つまりあなた達にとっての裏切り者がいるのよ!!"
"こうなったら..."
"無理矢理にでも消すだけよ!!!"
次の瞬間さらに風が強く吹きあれ、植木鉢に居座る植物達は葉が剥がれ落ちてゆく。
cykさんの手を振り払おうとする風はまるで、
私たちをさらに蝕む重力の様だった。
目を開けることすら ままならない風の中、
手も震えているのに絶対に離さんとするcykさんの手は私の手を更にぎゅっと握った。
もう限界なはず...本当にcykさんまで落ちちゃう...!!
cykさんの固有魔法『不運』、そう言えば記者達が押し寄せた時詠唱していなかった...自分で、コントロールできないからだったんですね。
それで今私を巻き込んだと思ってる?
その瞬間 とどめかの様に風が吹き、
cykさんの手は柵からするりと離れてしまった。
重力が無慈悲にも私たちの体を地面へと誘う。
一体どうすればいい?
どうすればこの場を切り抜けられる?
そんな疑問が闇となり、私の頭を曇らせていく。
詠唱は?
無理だ時間がない。
うまく着地できたり?
だめだ私は器用じゃない。
箒に乗るとか?
箒は部屋の中、今更呼べない。
__解決の光が、見当たらない...ッ
頭が闇に覆われていく。
二つの人影が太陽を背に、ベランダの柵に立っていた。
輪郭しか捉えられないが、
とても見覚えのある形をしているのがわかった。
二つの人影は躊躇いなくジャンプし、私たちを追いかける。
すると一瞬にして紫色の閃光が地面へ堕ちた。
地面がクレーターの様に凹み、ゴロゴロとした岩が空へ飛ぶ。
私はrir-さんに、
cykさんはkkさんに横抱きにされた。
今絶賛 落下中ですよね!?//////
kkさんの言葉が聞こえた時、もうすでに地面は目と鼻の先だった。
地面に当たる、。
そう思ったのも束の間、私は水に入った時のようなふわふわした感覚に包まれた。
...痛く、ない?
恐る恐る目を開けるとそこは真っ暗な場所。
そう、影の中だった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。