第18話

No.17
515
2023/10/19 11:27
??
……あなた?
低くて、優しい声。
私が求めていた、そんな声。
目をゆっくりと開く。彼の優しそうな顔を想像して。
暁山瑞希
暁山瑞希
大丈夫…?風邪引いちゃうよ…?
眼の前の瑞希がぐらりと揺れる。
夏草(なまえ)
夏草あなた
……は?
気付けば、無意識に。心の中でそう言い訳してしまう程、その時の私の感情を理解することは出来ない。

私は立ち上がって、私よりも低い背を見下ろす
夏草(なまえ)
夏草あなた
なんで……
暁山瑞希
暁山瑞希
……え?
夏草(なまえ)
夏草あなた
何でアンタなの!!
瑞希をどんと突き飛ばして、私はそう叫んだ。言葉に出来ない罵詈雑言を投げつけ、私は瑞希の胸倉をつかむ
夏草(なまえ)
夏草あなた
アンタのせいで!全部アンタのせいで!!
瑞希の伸びかけの髪を掴んで引っ張る。




夏草(なまえ)
夏草あなた
気持ち悪いっ…!
瑞希の腹部を蹴ろうと足を振り上げた時だった
??
何やってるんだ!!
今度こそ、私の大好きな声がした。
ふり返ると、そこには彼が居た。
夏草(なまえ)
夏草あなた
るいっ…!
彼の顔を見ると、彼の顔は酷く歪んでいた。

私はその瞬間現実に引き戻され。
眼の前の瑞希は、少し驚いたような、そんな顔をしているだけだった。
夏草(なまえ)
夏草あなた
ごめ…っ
握りしめていた手を開くとパラパラとピンク色の髪の毛が落ちていく。

何、やってるんだろう。
やられる辛さを知ってるのに、何も関係ない人を殴って。
ボロボロと涙が溢れる。
神代類
神代類
瑞希!大丈夫かい!?
暁山瑞希
暁山瑞希
全然!遊んでんるんだから類ってば気にしないでよー!
類が差し出した手を、瑞希は受け取らずに立ち上がった。

…数年前の私は、一体どうだっただろう。
差し出された手を当たり前のように取って、依存して。
神代類
神代類
そんな訳無いだろう、あんな事されて
類がポツリと呟く。
暁山瑞希
暁山瑞希
気にしないで。これはボクとあなたの問題だし、
そういって瑞希は笑った

私とは違って綺麗な笑顔だった。


私は、物語の主人公なんかじゃない。この物語は類と瑞希だけのもので、私なんかが居ちゃいけなかった。
私は今この空間の中で明らかに異分子だった。
神代類
神代類
あなた。
類がこちらに焦点を合わせる。その冷たい瞳が私の心を震わせた。
神代類
神代類
もう、俺たちに近付かないでくれ。

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