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照井『』
ペアリング.
「 ねぇ康祐.付き合って三年の記念にペアリングとかしたいんだけどどうかな? 」
『 …や.別にまだいらないんじゃね 』
そう言い残すと直ぐにスマホに夢中になっているのは付き合ってもう少しで三年になる彼氏の康祐だ.
元々愛情表現をしないクールなタイプではあるがここ最近特に酷いように感じている
「 …そっか.」
『 うん 』
康祐の家で半同棲をしている状態なのだがこれほどまでにこちらに関心がないものなのだろうか.
スマホで何を見ているのか.はたまた誰かと連絡を取っているのか
…それとも浮気なのか
疑いたくないという気持ちはあるが最近の彼はあまりにも怪しすぎるのだ
「 康祐.ちょっとコンビニに行ってくるね! 」
「 すぐ戻ってくる 」
『 あそ.つかコンビニ位いちいち報告いらねーから 』
「 そっか.ごめんね 」
確かに最近倦怠期を感じる事は多くあった気もする
でもいつもの康祐なら例えコンビニだろうと嫌がるフリをしながらも付いてきてくれる
コンビニに向かいながら私は悲しい気持ちを抑えられずにいた
「 …このアイス康祐好きそうかも 」
落ち込んでいる気分をなんとか持ち直そうとしてみるも頭の中は康祐でいっぱいだった
無邪気に喜んでくれる姿を思い浮かべながら私はアイスを二つ購入し家へと向かう
「 ただいま 」
家に帰り話しかけても彼はまだスマホに夢中だった
…本当にこのまま彼と付き合っていて良いのだろうか
「 ねぇ、康祐.さっきからずっと何見てるの? 」
『 何見てたって良くね?それあなた関係ないじゃん.』
一向に合う気配の無い視線に遂に怒りが込み上げてくる
もっと私を見てくれたって良いのに.
「 目の前に彼女が居るのに目すら合わないじゃん. 」
「 もう少しこっち見てくれたって良く無い?」
『 あーはいはい.ごめん 』
謝る気の無い返事.
変わることはないスマホへの視線
私が限界を迎えるのなんて容易い事だった
「 ね、私達って一緒に居る意味あるのかな.」
『 は?お前それ本気? 』
「 本気.…別れよ康祐.」
康祐が目を見開き驚いている
今まで別れ話なんてしたことのない私達だったけど.
ずっとスマホに夢中になるくらい誰かの事が好きならば私が身を引くべきだろう
こちらを見たまま微動だにしない康祐を横目に帰り支度を進めようとした時だった
『 急に別れようなんて言うな… 』
康祐が後ろから私を抱きしめる.
ハグなんていつぶりだろうか.康祐の温もりを感じ何処か安心する自分がいた.
「 私より素敵な人がいるんでしょう?」
「 私といてもスマホばかりならいっそ別れて康祐が夢中になってる子の元へ行くべきだと思うの.」
『 は? 』
「 してるんでしょ?浮気 」
康祐に聞きながら私は必死に涙を堪えていた
『 …勘違いさせてごめん.』
『 俺は誓って浮気なんてしてない. 』
「 嘘 」
『 嘘じゃない.』
『 …俺そんな信用ない? 』
困ったような、悲しいような.そんな顔で私を見つめてくる
「 私だって疑いたくないよ… 」
「 でも康祐があまりにも怪しいから疑いたくなるんだよ? 」
泣くつもりなんてなかったのに悲しさが込み上げてきてしまう
『 っあなた…! 』
「 ごめん.ちょっともう一回外出るね?頭冷やしてくる 」
外に出ようと振り向くと康祐が咄嗟に私の手を掴んでいた.
普段そんな事しない康祐だから思わず驚いてしまう
『 ごめん.ちゃんと説明するから外でんな… 』
「 わかった.」
泣きそうになっている康祐を見て一先ずリビングに戻りソファーに二人並んで腰掛ける
こんなにも近い距離で座るのなんていつぶりだろうか.
「 で、何? 」
座ってから暫く経っても中々口を開かない事に痺れを切らし思わず冷たく言ってしまう.
『 悪かった.』
「 別に今は謝罪求めてない.説明が聞きたいんだけど 」
康祐は意を決したような表情で私を見つめていた
『 …三年の記念日ペアリングがいいって言ってただろ、? 』
『 実は俺からサプライズでペアリング渡したいってずっと思ってて 』
『 俺あんま愛情表現とか恥ずくてできねぇし 』
『 いつもあなたの優しさに甘えてたからたまには俺から何かしてあげたくてスマホでずっと調べてた. 』
『 でも結局あなたを傷つけて悪かった.』
『 本当はサプライズで喜ばせたかったんだ.』
バツの悪そうな顔をしてる康祐を見て疑ってしまった自分が嫌になる
どうしてもっと自分から寄り添おうとしなかったんだろう.
「 私こそ簡単に浮気を疑ってごめんなさい 」
「 もっと信じるべきだった 」
申し訳なさで顔を上げられずにいると康祐に正面から抱きしめられた
「 …康祐? 」
『 もう仲直りしよ.もうこれ以上あなたと気まずいの俺嫌だわ 』
『 お互い話せなくてすれ違っただけだから. 』
「 …うん. 」
康祐の背中にそっと手を回すと私を抱きしめる康祐の手にギュッと力が入った
『 これで仲直りな? 』
『 もう絶対あなたを不安になんかさせねぇから. 』
「 うん.仲直りね?今まで放置してた分構ってもらうから. 」
『 もちろん.…なぁ、週末ペアリング買いに行こうか? 』
康祐からの嬉しい提案に私は目を輝かせた
「 いきたい!! 」
『 ん.そうしよっか.』
『 今日はこのまま一緒にいよ.』
「 もちろん.」
二週間後、私達の手にはお揃いの指輪がはめられていた.
このすれ違いをきっかけに康祐からの愛情表現がうざいほど増えるのはまだ少し先の話.
Fin












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!