そのあと、大介とは銀座の鉄板焼きのお店に来た
私からしたら普段立ち入ることのない高級店すぎて、颯爽と入っていく大介に少し距離を感じた
そりゃ普段からお付き合いとかでこういうお店にも行くよね…
私たちも恋人同士とはいえ、一般人と芸能人。名前を知らない人はいないほど超絶人気アイドルグループの一員だもん
『あなたの下の名前、こっちおいで』
「あ、うん」
通された完全個室にはぼんやりとライトが照らされていて、いかにもお忍びデートで使われていそうな上品な空間だった
大介にそんなに緊張しなくて大丈夫だよとは言われたけど緊張する。御手洗に行くのすら緊張して気持ち的にはご飯も喉を通らなそう…
『……今日は、ごめんなさい』
「え、?」
席に着くなり謝られた
『いや、ほら、あなたの下の名前のこと気にかけないでSNSでチョコ欲しいとか呟いたり、無神経に推しに会ってくるとか言ったり…俺あなたの下の名前ならなんでも寛大に許してくれると思っててあなたの下の名前のことは後回しにしてた気がする…』
「うん…」
『今の俺がいるのって紛れもなくあなたの下の名前のおかげなのにそこをちゃんと理解できてなくて挙句の果てにはあなたの下の名前を泣かせて悲しませて、俺本当にダメだよね…ごめん、』
「大介…」
『俺のことは許さなくていい、嫌なら別れてもいい、…』
そう言うとゆっくりと俯く彼は、今にも消えちゃいそうな声で少し肩を震わせて私の返事を待っている
「………なんでそんな事言うの」
『、、』
「別に私は大介が嫌いなんじゃない。確かに私のことはどうでもいい時あるのかなとか思う時もあるけど、でもいつも大介に支えてもらってる…だから、そんな事言わないでよ」
『っ、ごめん…』
「大介、顔上げて?」
『……』
チュッ
彼の頬に両手を伸ばして、唇に触れるだけのキスを落とした
「私、怒ってないからそんな顔しないで?やり直そうって言ったの大介じゃん?」
『、俺…』
「大丈夫だから、分かってるから」
『いつも我慢させててごめん、俺あなたの下の名前しかいないから』
「ふふ、分かってるよ。ほら、お料理来る前に楽しい気分になろ!」
『うん』
彼の頬に流れた一粒の涙を拭い、料理が提供されるのを待つ
「お待たせいたしました」
運ばれてきた料理に息を飲む
『食べよっか』
「うん、いただきます」
『いただきます』
口に頬張るとじゅわっとお肉の脂が溶けだして溺れそう
「おいしい」
『んね、すっごい美味しい』
「ありがとう、大介」
『こちらこそありがとう』
「お家に帰ったら渡したいものがあるんだけど…」
『俺っちにチョコ?笑』
「なんでしょーねー笑」
『その気持ちが嬉しいよ』
「そんなにいいものじゃないけどね、」
『あなたの下の名前と一緒に居れるだけで俺は十分幸せだよ』
「もう、そんなキザなこと言ったって私には効かないよ笑」
『がびーん笑笑』
どちらともなく笑いあってご飯を食べた
家に着くと、私は用意していたプレゼントとチョコレートを大介に渡した
俺にくれるの?!なんて目が落ちそうなくらい開いててちょっと笑っちゃった
不満なことはもちろんあるし普通のデートができないことも分かってる。でもたまには恋人らしいことだってしたくなる。
だから…
「大介、」
『ん?』
「残りの時間は、私だけ見て?」
『もちろんだよ』
そっと唇が重なる
『俺だけの彼女』
「うん」
『今夜は離さないから』
もう一度、今度は力強く唇が重なった
end.












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!