引きずるような足取りで歩く。
あぁ、首が痛い。
肩も、足も、頭も痛い。
そんな事を考えていたら 家はもう目の前。
履いていた黒い靴を脱いでドアを開ける。
ただいま、そう小声で呟いてリビングに行くと
横隣のサンルームから猫の声が聞こえてきた。
新しく保護猫が増えたらしい。
覗いてみると、ガリガリな三毛猫の姿があった。
ここから見ても浮き出た骨がうっすら見えるほどだ。
リビングの机の隣には
小型犬や猫用のケージが一つ。
覗いて見るが、
シマエナガの柄の毛布が入っているだけで
何も居ないようにみえた。
私の母親は野良や捨て猫、保健所に居る子を
捕獲したり引き取ったりしてTNRをしたり里親を探す、
所謂 保護猫活動をしている。
まぁ犬も保護してるんやけどね。
私もよく保護の手伝いをしていて
この活動と、活動をする母親に誇りを持っている。
病気や栄養失調、元の環境の悪さによる免疫力低下、
親猫が母子感染をする病気に掛かっていた、
といった理由から死んでしまう子も居る。
保護をするとはそういう事、
助けたくても助けられない事は多い。
常に死とは隣り合わせ。
あの子も何かしら理由があるんだろう。
後であの子の話を聞いてみようかな、と考えつつ
ちらっと時計を見ると 既に6時を回っていた。
まずい、作業の時間が減ってしまう、と
急いで学校のカバンを置きに行く為に自室に向かった。
自室に戻った後は
学校のバックからスケッチブックや筆箱、色鉛筆に
ノートPCを取り出して 全てベットの端に放り込み、
ついでに自分もそのベットにダイブして寝転ぶ。
そして放り込んだ奴らを定位置に置いて、
スマホでイラストを描いて配信をする。
スマホがあるのに何でアナログ画材を用意するのかって?
キャラクターや衣装のデザインとかをする時は、
素早く・分かりやすく描くのが必要だから
描き慣れてる方を使ったほうがいいでしょう?
あと単純に周りに画材とか機材があると落ち着くからかな。
ラフ、線画、衣装デザイン、雑談配信、作業通話。
やりたいこと、やらなくちゃいけないこと
やる予定のことを自身の手で表現していく。
それを知り合いに見せて、改善点を探す。
時には相談を聞き、時には新しいことに挑戦し、
時には談笑をし、時には考え、時には調べ、時には実践をし…
苦楽を噛み締めて楽しむ。
そんな時間はあっという間に過ぎていくらしく、
いくら作業スピードを上げても、依頼を消化しても、
やる事は増えていき、時間が絶望的に足りなくなる。
この時間帯は基本的に静かなので、
チクタク、チクタクと
秒針が進んでいく音が嫌という程耳に入ってくる。
その為、作業中は基本的に
イヤホンで好きな曲をリストを流しながら作業をする。
いつも通りの、なんら変わりない時間を過ごし、
腹が鳴った頃にはもう10時。
一度作業を切り上げて
リビングに行って夕食を食べようと思い、
階段を降りて扉を開く。
ドアの前に我が家の愛猫が座っていた。
にゃー、と鳴いてから奥に走り去る。
灰色の猫を目先で追うと、
リビングのテーブルの前に母親が居るのが見えた。
よく見ると、手に子猫が乗っかっている。
キジトラっぽい、サビっぽい柄の小さな子猫。
そして、視線を左にずらすと先程のケージが開いていた。
ふわふわの毛布が入っていたので、
小さな子猫は埋もれて見えなかったのだろう。
近寄って見てみると、
目も開いていない生まれたての子だった。
この子は?と母親に聞くと、
帰ってきた時に見た三毛猫“クレア”の子供らしい。
へぇ〜…と気の無いような返事をすると
私が事情が気になっているのを察してか、
いつものように
うちに来るまでの生い立ちを話してくれた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!