素直は街中を歩いていた。
偶然バイトも休みの休日。
特にすることもないし、行く予定の場所もない。
友人の飛にでも連絡するか。
そう思い始めていた。
素直がスマホを取り出した時だった。
誰だこの人、という感想が浮かんだ。
別に話したことも無ければ、会ったこともないはずだ。
素直は以前、人の顔が風船に見えていた。
その時にあった事があるのかもしれない。
そう考え、素直は笑顔を作る。
今、幸せですか。
この問から始まる話を、素直は知っている。
素直は、ようやく悟った。
宗教には別に興味は無い。
しつこくないと良いな…と思いながら、素直は話を聞くことにした。
素直は言葉がつっかえない様に気をつけながら返答する。
しかし、男性は大袈裟に首を振る。
素直は、困ったな、と思い始めていた。
何だかしつこそうだ。
男性は早口でまくし立てる。
素直が、少し遠慮がちに遠回しに断っても、男性は引かない。
男性の目は血走っている。
もはや恐怖を抱き始める。
もちろん、そう願っても誰かが助けてくれるはずもない。
素直が無言なのを、検討しているとでも勘違いしたらしい男性が、更に距離を詰める。
男性は素直を強引に連れて行こうとする。
そして素直は、バイト先の後輩に聞いた噂を思い出した。
素直は、サミットだけは絶対に断らねばと考える。
しかし、素直は人の頼みを断るのが苦手だ。
何でも笑顔で頷いてしまう。
断ろう断ろうと思うのに、声が喉の奥に張り付き出てこない。
素直が涙目で頷きそうになった時だった。
友人の飛が、素直と宗教勧誘の者の間に、かなり強引に割り込んだ。
流石に、宗教勧誘の男は驚いた。
しかし、すぐに調子を戻す。
飛は、鋭い目付きで宗教勧誘の男を睨む。
飛は、かなり鋭い言葉をかける。
男性は、飛の殺意の込もった目に怯えたのか、無理と判断したのか、後退する。
そして…
宗教勧誘の人は、いそいそと去って行った。
素直は、ホッと胸を撫で下ろす。
ようやく心が落ち着いた。
飛も、何だかスッキリした顔だ。
大方、仕事中だったのだろう。
電話しなくて良かった、と心の底から素直は思った。
飛は、んー、と伸びをする。
その後、飛と素直は近場のラーメン屋でご飯を食べた。
素直の奢りだったからか、流石に遠慮したようで、飛はいつもよりかは食べていなかった。
常人と比べれば多かったが、遠慮は確かにしたのだろう。
二人は、何やかんや言って友達だ。




















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。