その夜、蝶屋敷の外は冷たい風が吹いていた。
屋敷の灯りが遠ざかるたび、
胸の奥の不安が強くなっていく。
─毒まみれの腕。震える手。
あの光景が、頭から離れない。
「……絶対に、守る」
誰にも聞こえないよう、小さく呟いた。
たとえ彼女が自分を犠牲にしようとしても、
そんなことはさせない。
しかし、無限城を進む途中、空気が変わった。
冷たく、重く、皮膚を突き刺すような妖気。
次の瞬間、視界の奥で藤色の羽織が翻った。
「──胡蝶さん!」
彼女は振り返らない。
そのまま闇の奥へ進み、大広間に辿り着く。
そこにいたのは、血のように赤い瞳を持つ男
──上弦の弐、童磨。
空気が一瞬で凍りつく。
童磨「ようこそ。美しい蝶さん」
童磨は笑い、両腕を広げた。
その笑顔には、血の匂いと悪意が混ざっている。
彼女は一歩も退かず、静かに刀を握った。
胡蝶「……私は、鬼殺隊 蟲柱・胡蝶しのぶ。
ここで、あなたを討ちます」
その声には、恐怖も迷いもなかった。
だが僕は気づいていた──
彼女は、この戦いで命を賭けるつもりだ。
「やめてください! あなたはまだ──」
言い終える前に、彼女は振り向いた。
藤色の瞳が、真っ直ぐに僕を見ている。
胡蝶「…お願いです。貴方は、この先に進まないで」
微笑みながらも、その声は静かな命令だった。
「嫌です。置いていくなんて──」
「大丈夫。私は……笑って終わりますから」
その一言が、胸を刺した。
次の瞬間、彼女は童磨の元へ駆け出した。
童磨との距離が一気に縮まり、刀が閃く。
僕は足を踏み出すが、
その背中はあまりにも遠く感じられた。
──この戦いが、彼女との最後になるかもしれない。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。