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神山side
金がなく、身分が低い俺は、
幼い頃から遊郭で育てられた。
最初は人さらいにあったそうだ。
勿論、幼すぎて覚えてすらいない。
まず、両親の顔を知らないのだ、
祖父母宅で生き長らえてきた。
…そうだ。
祖父母の顔は思い出せるが、
ここに居る期間の方が長い。
淳太が第2の親のようなものだ。
淳太は、高い位の花魁。
遊女の中でも、
男性は花魁に上り詰めるのは難しい。
淳太は、そんな偉い位の人だ。
…遊女だから自由は利かないが。
といっても、ここの遊郭は8割が男性なのだ。
かく言う俺もそうだ。
この遊郭付近には、男色の殿方が多い、
そんな理由らしい。
約2割の、女性だと思われて
連れ去られてきたそうだが。
話を戻すと、俺はここに囚われていて、
淳太は花魁、俺は遊女。
遊女は、来た殿方にお饗しを与える存在。
簡単に言うと、
体を売る、
ということだ。
殿方、言うても知らない人と交合うのは辛かった。
俺も男性の端くれ、
恋愛対象は女性だったからだ。
だが、それももう慣れてしまった。
この世界で生きていける位の知識と経験を積んだ。
今俺は翠色。
要は源氏名だ。仕事中の呼び名。
そう、対客が入った。
黄蘗、淳太のことだ。
殿方は2人。
体格のええ方と、長身で塩顔の方。
指を指された。
黄蘗が慌てたようにして訂正する。
そう言うと体格のいい方は
黄蘗の肩を寄せる。
ていうか、
この照史さん、黄蘗の名前を知ってる、、?
濵田、さん、
って言うんや。
さらっと俺らのこと綺麗な方、
言うてはる。
物凄い軟派者なのかしら…、?
そうは見えへんけど。
殿方の女形は珍しい。
何故か、濵田さんに少し親近感を覚えた。
濵田さんと話しとったら、
楽しい。
もっとこの人のことを知りたいなぁ、
やなんて、
遊女の俺が思うたらあかんのかなぁ、?
ぱちっと、片目を瞑られる。
ウインク、言うやつかしら。
流石花魁、美しいわ黄蘗さん、
さて。
部屋に来ても、一向に動きがない。
濵田さんは何もなさらない。
ないんかいっ、
物凄く挙動不審。
さっきまで会話、弾んでいたじゃないですか、
こんなこと自分で言ったのは初めてだ。
いわば、性交を誘っているのと同等のことだ。
あ、
この人、
純粋だ。
結局、世間話に花咲かせて。
そのまま時間は経ちました。
お似合い…えへへw
濵田さんが来るのを、
毎日楽しみにしてるとか、
言ってみたりしちゃいます?w
❦ℯꫛᎴ❧
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。