前の話
一覧へ
次の話

第46話

鹿おどし
310
2024/06/23 12:59

 ー 数日後 ー


  あなた side












   
     カコンと、柔らかな竹の音が鳴り響く。




    砂で敷き詰められた庭に備え付けられた

       紅や黒の鯉が泳ぐ少し大きな池。

      そこから少し離れた縁側に座って

   目の前の竹でできた筒をぼーっと眺めていた。





     竹の中にゆっくりと水が溜まっていき

    やがて竹は水の重さに耐えられなくなり

      流れ続ける水を断ち切るように、

    口を下げて、溜まったモノを溢れ出す。

    そんな動作がひたすら繰り返されている。







あなた
  ……何しに来たの  



















あなた
  ふし  
伏黒 恵
伏黒 恵
  っ! 





   後ろに現れたふしの呪力を相手に、そう呟く。






  背後に居るから見えないけれど、ふしの驚くサマは

   ゴクリと息を飲む音から簡単に想像が着いた。





伏黒 恵
伏黒 恵
  ………………  
伏黒 恵
伏黒 恵
  ……帰らないのか、?  





     私を気遣うような、そんな優しい声。

  緊張を孕んだその様子に、少しだけ心が揺れる。




あなた
  …………  






      なんて答えようかと悩んでいる間、

    目の前で上から下へと緩やかに流れる水は

  とめどなく筒の中に入っては、捨てられていく。






あなた
  これ、'' 人 ''  みたいだよね  






     後ろを振り返りふしの顔を見つめつつ、

       スっと目の前の竹に指を指す。




    そんな私に、ふしは数秒間「は?」という

  心底意味不明だ、とでも言いたげな表情を浮かべた。





伏黒 恵
伏黒 恵
  これ……?
…!あぁ、「鹿おどし」か…




         数秒間沈黙した後、

     ようやく私の言葉の意図が伝わったのか

    ふしは私の指の指す先を見て、そう呟く。



あなた
  へぇー…これ、ししおどしって言うんだ  





     こんなモノの名前まで知ってるなんて

       ふしはやっぱり頭が良いなぁ。




  そんなことをしみじみと感じつつ、言葉を続けた。




あなた
  いっぱい水を溜め込むのに  
結局耐えきれなくなって捨てちゃって
あなた
  それでもまた溜め込んで……  
あなた
  穴を開けてしまえば
溜め込むことも無くて楽なのに
あなた
  そうしないのは、きっと最初の頃は  
''幸せ''だからなんだろうね






   溜め込みすぎると、重たくて捨てたくなる。

  でも何も入っていないのは、何だか物足りない。





あなた
  ね?とっても  '' 人 ''  みたい  
あなた
  私も少しは分かってきたんだよ  
伏黒 恵
伏黒 恵
  っ……  






      辛そうに歪められたその顔を見て

      あー、スキだなぁ。と思う反面、

        胸の奥がチクチクと痛む。







    こんな複雑で、厄介な''重たい感情''は

  もう既に私の心の中に溜まりきってしまっている。







     でも未だに捨ててしまえないのは、

     空っぽになってしまうのが怖いから。





伏黒 恵
伏黒 恵
  ……あの時は、悪かった  
あなた
  ……え? 
















_@_
急ぎの更新ゆえ
文章が変でしたらすみません









_@_
私のにこいちの新作です!!!!
文才は保証します
_@_
絶対に見ましょう!!!
マジで百発百中でおもしろいので

プリ小説オーディオドラマ