伏黒 side
五条さんが出張から戻ってきた後
あなたのことを俺から説明しに行った。
この人のそんな悪意ある言葉に、
いつもの俺なら反論していたかもしれないが
今回ばかりは五条さんが正しいから
俺は何も言わず、ただ拳を握りしめる。
俺は、ひとしきり内に秘めていた言葉を伝え
下げていた視線を再び五条さんに戻す。
視界に入った五条さんは、
予想外にもそんな俺の態度に感心したかのように
手を顎に添えていた。
クククと笑う五条さんの顔面を
殴りたくなる衝動を何とか抑える。
この人、本当に人をイラつかせる天才だな。
五条さんの冷たい一言で
喉がギュッと締め付けられる感覚に陥る。
ずっと気付かないフリをしていた考えを
言い当てられたみたいな気分だ。
五条さんはその長い足を組み直して、
背もたれにグイッと重心を預け
何も無い天井を目隠し越しに見つめる。
ズシッと、岩が肩にのしかかる様な威圧感。
こういう時、この人が「最強」だという事実を
再認識させられる。
天井を見つめていた五条さんは
黙ったままの俺を一瞥すると
低い声のまま言葉を続けた。
ニヤリと笑ったその顔をやっぱり殴りたくなった。
この人は相変わらず
人の都合なんてどうでもよくて
俺の資格どうこうの話も、関係ないんだ。
俺のため息混じりな声の後に
「ピンポーン!」と、通常通りの陽気な声が響いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。