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第9話

八話・嫌味なやつらだぜ
61
2022/11/01 04:23
部室らしき小屋には鍵がかかっていた。のりかは壁に足をかけ、強引にドアを引いた。
のりか
やっぱ開かないか
氷浦は校舎を見渡して言う。
貴利名
貴利名
確かに島の学校と違うな
剛陣先輩
なんかよ、気持ちがこう、グーッと上がってくるよな
剛陣も初めての東京に浮かれていた。
小僧丸
実力上げろよ
小僧丸がボソッと言う。
剛陣が
剛陣先輩
ああん?
と突っかかる。それを岩戸がまぁまぁとなだめている。
騒がしい集団。しかも私服。彼らは校内でものすごく目立っていた。
生徒
あいつらじゃないか、サッカー部に入るってやつらは
生徒
田舎もんがサッカーとかできんのかよ
在校生が遠巻きに話していた。
直接、明日人たちに話しかけてくる生徒もいた。女子の集団だ。
???
あなたたちが、伊那国島から来たサッカーチームね
中心にいる、一番上品そうな感じの生徒が口を開いた。
神門杏奈
私は神門杏奈。生徒会長として、すべてのクラブ活動の管理を担当しています。新生サッカー部がどうなるか見極めるのも、私たち生徒会の役目なの
剛陣先輩
見極めてどうすんだよ?
剛陣が問い返すと、杏奈を取り巻く女子たちが、上から目線で次々にしゃべり出した。
生徒会
継続する価値がないとわかれば、排除します
生徒会
スポンサーもいないチームが雷門を名乗るなんて、身の程知らずもいいところですわ
生徒会
まぁ、来週の試合で負ければ、私たち生徒会が決断するまでもないですけど
明日人
明日人
俺たちは勝つ!勝ってサッカーを取り戻すんだ!
生徒会
へぇー、あなた、相手が誰だか分かっているの?
一度は言い返した明日人だが、思わず
明日人
明日人
相手?
と聞き返していた。
杏奈が後を引き取る。
神門杏奈
星章学園のエースストライカーは『フィールドの悪魔』と呼ばれている。……彼の名は灰崎凌兵
奥入君
聞いたことがあります。彼が出てくると、必ず10点を超える大量得点で星章学園は勝利する……
奥入が解説する。
神門杏奈
万が一、ランキング1位の星章学園にあなたたちが勝つようなことがあれば、天地がひっくり返るわね。
明日人
明日人
それなら、勝ってひっくり返してやる!
明日人は胸を張る。女子たちは困ったような顔でクスクスと笑った。
神門杏奈
とにかく、あなたたちの初戦、お手並み拝見といかせてもらうわ
杏奈たちは歩き去った。
剛陣先輩
嫌味なやつらだぜ
剛陣が吐き出す。
奥入君
まぁ、この学校の人たちから見れば、僕らはどこの馬の骨ともわからない田舎者。そうやすやすと大人気だったサッカー部の代わりとは認めてもらえないでしょう
奥入にそう言われると、
剛陣先輩
それもそうか
と剛陣も納得した。
と、そこへ、また別の声が近づいてきた。

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