第2話

第壱章『真実』 陸の目
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2025/11/25 11:00 更新
真っ暗な部屋。
眩しくパソコンの画面。
散らばったエナジードリンクの空き缶。
獅子尾悠佑
はあ…、
ぱたん、とパソコンを閉じて、溜息を吐く。
右手には、古惚フルボけた新聞。
「獅子尾一家殺人事件」
兵庫県⬛︎⬛︎市で発生した、
獅子家の計二名が自宅で殺害された事件。

被害者は、父親である、獅子尾⬛︎⬛︎(⬛︎⬛︎歳)、
母親である、獅子尾⬛︎⬛︎(⬛︎⬛︎歳)。

警視庁は、長男で独り子である、
獅子尾悠佑(六歳)を容疑者と見て、
捜査を行っている。
俺の名前が載った、二十年前の新聞。

俺の名前は獅子尾悠佑。
『獅子尾一家殺人事件』の犯人として追われている。









━━━が、俺は犯人ではない。
二十年前。

当時六歳で、小学校に入学したてだった俺は、
その日も真っ直ぐ家に帰った。

その日は、両親が二人共休みで、
何して遊ぼうかな、なんて考えながら扉を開ける。
そこには、初夏であった当時にしては、
暑すぎる位の玄関があった。

違和感を覚えて、リビングに走る。

地獄絵図だった。

今直ぐ逃げ出したくなる様な悪臭。
真っ赤に染まったフローリング。
所々に散らばる肉片。









━━━目の前の肉塊が、両親であると理解するのに、
数十秒を要した。

恐怖だけが、頭の中を支配して。

気が付いたら、逃げ出していた。



それから、野宿生活が始まった。
生憎、親戚なんて居なかったから、
取り敢えず、死なない事が最優先だった。

死なないで、両親の分まで生きて、
両親の死んだ理由が知りたかった。
二十五歳になった頃、とある男から連絡が来た。
内容は、
異能力者のシェアハウスに参加してみないか、
という物だった。

確かに、俺は異能力者だ。
発した言葉通りになるという、
その気になれば、
一国の王になれる位に、強い異能力の。

だけど、幼い頃から正義感だけは人一倍あったから、
一度も使った事は無かった。

だから、送り主が、俺が異能力者であるという事を、
何処で知ったかは分からない。
裏ルートとか? 詐欺だったらどうしよ。

まあ、生活費が浮くなら、と二つ返事で承諾した。

少し、いや、かなり怪しいが、
両親の原因不明死をも経験した俺なら、
乗り越えられるだろう。









何が起こるかは分からない。
何が起こっても、両親を殺した犯人を、
『獅子尾一家殺人事件』の真実を、突き止めるんだ。
獅子尾悠佑
…っ、
嫌な事を、思い出してしまった。
俺には、思い出に浸っている時間なんて、ないのに。
自室から出て、階段を降りる。

リビングに出ると同時に、勢い良く抱き着かれた。
猫宮いふ
あにき! 一緒に風呂入ろ!
このデカいのは猫宮いふ。
俺は、まろ、と呼んでいる。
自分は幼児退行する癖に、
あにき可愛い〜!、とか言う、変な奴。
稲荷ほとけ
いや、あにきは僕の方が好きだから!
あにきは僕とお風呂入るから!
そんなまろを
俺から引き剥がそうとしているのは、稲荷ほとけ。
この家の癒しはこいつ。
大体いつも騒いどるのもこいつ。
有栖初兎
何言うてんねん!
悠くんの一番は僕やから!
ぷくっ、という可愛い効果音が付きそうな位に
頬を膨らませているのは、有栖初兎。
こんな顔して、凄い毒舌の持ち主。兎が友達。
大神りうら
え、三人だけズルい!
りうらもあにきの事好きだよー!
さらっと弟属性を発揮しているのは、大神りうら。
この家の最年少ながら、多分一番のしっかり者。
乾ないこ
ちょっと、あにき困ってるじゃん
離れなよー
遠くで叫んでいるのは、乾ないこ。
俺をシェアハウスに誘った張本人で、この家の家主。

この、全員成人済みとは思えない程の騒がしさは、
一年経った今でも慣れない。









━━━いや、あれ『獅子尾一家殺人事件』から二十年経った今でも、
人の温もりに慣れていないのか。

お前らはもう風呂入ったやろ!、と
叫ぶまろをよそに、
俺はまたネガティブな思考を展開する。

あにき、という呼び名は、
俺が此の家の最年長で、
頼り甲斐があるから付けたらしい。
正直、幼い頃に家族を無くした俺にとって、
こいつらは弟の様やったから、
あにき、と呼ばれるのは凄く嬉しかった。









━━━ただ、そんな弟達は、
俺が自室で何をしているのかを、聞いて来ない。

毎回、結構な長時間、自室に籠っているし、
怪しまれてもおかしくはないのに。









━━━もしかしたら。
『獅子尾一家殺人事件』の事を、
俺が殺人犯として追われている事を、
知っているのではないか。

この中に、両親を殺した犯人が居るのではないか。

…だとしたら。
獅子尾悠佑
…ごめん、
騒がしかったリビングが、嘘の様に静まり返る。
獅子尾悠佑
俺、今日一人で入るわ
まろ先でええよ、と言い放ち、リビングから出た。
ドアにもたれ、やってしまった、と
薄暗い廊下で後悔する。
…本当は、凄く嬉しかったのに。









でも。
獅子尾悠佑
…これでええんや









━━━俺には、こんな感情、不要だから。


名前  獅子悠佑

異能力 言霊アファメーション
    念を込めて言葉を発すると、
    其の言葉通りになる。
    タダし、複数回使ったり、
    威力の強い言葉を発すると、
    喉に負担がかかる。

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