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第1話

歪んだ町の少年
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2025/10/16 12:20 更新
霧のような灰色の空が、永遠に沈んでいた。
そこに立つのは、紙袋をかぶった少年――“モノ”。

彼の世界には、音がない。
聞こえるのは、テレビのざらついたノイズと、
遠くで鳴る歪んだ風の音だけ。

建物は傾き、街はねじれ、
人々は“画面”の中へと吸い込まれていった。
誰もが目を失い、ただ光の中へと溶けていく。

モノは走る。
崩れかけた床を渡り、影のような手を避けながら。
やがて、彼は出会う。
小さな箱の中に閉じ込められた少女――シックスに。

彼女の瞳は、どこか遠くを見ていた。
モノはその手を取る。
ふたりの間に言葉はなかった。
ただ、沈みゆく世界の中で、
“生き延びる”という目的だけが、彼らを繋いでいた。

――だが、街は彼らを拒む。

雨の降る校舎、首のない教師、
歪んだ子供たちの人形。
伸びる手、笑う目、
世界は少しずつ壊れていく。

そして、彼らは信号塔へと辿り着く。
時間がねじれ、現実がほどけていく場所。
塔の奥には“シン・マン”――
ノイズの中から現れる、細長い影。

逃げる。
走る。
手を離さないように――
だが、いつか必ず、何かが離れていく。

モノはシックスを助け、何度も世界を超えた。
けれど、最後の瞬間――
その小さな手は、もう握り返してはくれなかった。

彼女はモノを見下ろし、
沈む床の上で、ただ目を閉じた。

その瞬間、少年の中に残ったのは、
怒りでも悲しみでもなく――静寂だった。

やがて彼は立ち上がる。
歪んだ部屋の中で、ゆっくりと背を伸ばす。
テレビの音が消え、
ノイズが彼の身体を包む。

そして、“モノ”は――
“シン・マン”になった。

永遠に、あの塔の中で。
いつか、あの少女が再び通り過ぎるその時を、
ただ静かに待ち続けながら。

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