第3話

Ep.2 「ツイてる」
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2026/07/22 04:30 更新
 
─────「早く起きろ!!」

 
ドイツ
…!
元奴隷の少年───ドイツは飛び起きた。商人の男の乱暴な声が聞こえた…気がしたのだが、気のせいだったみたいだ。

少し荒くなった呼吸を整えると、周りの景色が見えてきた。

ドイツ
(…ここは…?)
一般的な家屋のリビングという感じだ。
カーテンの隙間から漏れる光を見て、今は朝だとわかった。

タイミングよく、部屋の奥のドアが開く。
あ。
入ってきた男は起きたドイツを見ると、早足で近づいた。ドイツは少し男と距離を取る。

男は慣れない様子でこちらに話しかけてきた。
おはよう。…お腹減ってる?
ドイツ
え……あぁ……はい…?
あー…自己紹介から始めると
あなた
俺は君の購入者であり、これから君の保護者になる、あなたという者です
あなた
よろしく。君の名前は?
ドイツ
…俺はドイツです
ドイツ
……よろしくお願いします
奴隷から養子にしてくれたとはいえ、この男の人物像がよくわからない以上、まだ簡単に警戒は解けない。





あなた
(あーー…どうすっかな)
子供となんて触れ合ったことないから、どう接していいのかよくわからない。きっとドイツくん10歳前後ぐらいだろ…?
あなた
…なにか、好きな食べ物とか……ある?
ドイツくん
……いえ
あなた
そっか…
あなた
…パンでもいい?
ドイツは頷いた。
あなたはテーブルの上の料理───自分の朝食を指さして言う。
あなた
コーンスープとかもあるから。先に食べてて
あなた
俺は朝食より先に、考えないといけないことがあるから
そう、あの大量の金のこと。どうしよホントに。
ドイツくん
…わかりました
あなた
あぁ、楽に話してもらって大丈夫だからね。俺は義理だけど一応親だし
あなた
もうここは自分の家だから、自由にくつろいでていいんだよ
ドイツくん
…はい


まだ信用されていないようだった。そりゃそうか。

あなた
…じゃ





自室。
目の前に積み上げた大量の札束。歴史の教科書で一度は見たであろう、札束で遊ぶ子どもみたいな絵面になっている。
あなた
(これ全部消費しなきゃ……。気が遠くなるなぁ…!!)
元々、あなたは無欲な方だった。この大金の使い道なんて、普通に暮らしていたら無いだろう。
あなた
(……とりあえず、今日は買い出しに行こう)
今日から朝昼晩メシ2人分だし。
あなたはお札をサイフに詰め込んだ。


 
リビングに戻ると、ドイツはまだ朝食を食べている途中だった。
あなた
ドイツくん。俺、今から買い出ししてくる予定なんだけど…。留守番できそう?
ドイツくん
…はい
あなた
まだ腹減ってたら、キッチンの食料保管庫からなんかとって食ってていいよ
あなた
じゃあ、いってきまーす





─────朝。市場。


ということで。あなたは市場にやってきた。
まだ人は少ない。


新鮮な魚はいかが?
安いぞ安いぞ!!緑黄色野菜!


市場のおっちゃん、おばちゃんたちは朝から声を張り上げて売り出している。もうだいぶ高齢だろうに、若者より元気だ。


とりあえず、食べてなかった朝飯を買い食いしてから、好物を食べ切れる分だけ片っ端から買っていく。市場に来て三十分も経っていないのに、すでに手荷物が重すぎる。


あなた
(こんなに買っても、お札1枚も減らないのかよ……)
あなたはしばらく朝市で買い物をした。






重い荷物を持って1時間以上歩いていたあなたは、さすがに疲れてきた。一旦近くの広場で休もうと思い、広場のほうに向かう。と───。

さっさと金返せゴラァ!!!!

広場から聞こえてくる怒鳴り声。通行人が広場を避けていく。広場には、ゴツい体つきをした男性と、同い年ぐらいの青年がいた。
あなた
(また騒動…?2日連続だよ。ツイてないな)
巻き込まれたくはないが、この重い荷物を持って立ち往生もしたくない。騒動はガン無視して、広場のベンチで休もう。


いつまで滞納する気だぁ!?
あ、明日!!明日には返すからっ!
…今は…っ!
……言ったな?その代わり、明日持ってこなかったらどうなるかわかってんだろうな
この街の病院に、重病持ちの弟がいるそうだが…。場所抑えてんだぞ、こっちは
っ……わ、わかったんね


取り立て人?のような人が去っていく。

取り立てられていたひとは、膝から崩れ落ちた。見事な崩れ落ち方だ。後世に語り継がれるだろう。

………なんで…
 
あなた
…大丈夫ですか?
思わず話しかけてしまった。一部始終を知っていたのに。騒動に巻き込まれたくないと思っていたのに。
あ…えっと
あなた
一旦、飲み物でも飲みましょ。最近暑いし
あなた
カ●ピスでいい?





二人はベンチに揃って座った。
取り立てられていた青年の名前はイタリアというらしい。

イタリア
ずっと見てたでしょ?君。僕の状況はだいたいわかってるはず。……なのに、なんで話しかけに来たんね?
イタリア
巻き込まれるかもよ?
心配そうにこちら見る。
あなた
カルピス渡してちょっと雑談しただけの人は人質に入らないだろ。と高を括ってる
イタリア
…そっか
あなた
何があって、ああなった?…あ、聞いていいやつ?これ
イタリア
……弟の手術代を借りたんよ。150万ぐらいだったかな
イタリア
でも、それは期限までに用意できたんよ
あなた
(じゃあなぜ…?)
イタリア
………さっきの取り立て人、法外な額の利子つけてきてさぁ
あなた
(お〜っと…闇金か……)
イタリア
何百万になったと思う?
彼は自嘲気味に笑って、「800万」とつぶやく。
イタリア
…明日まで、だってよ
イタリア
……無理でしょ
声が震えていた。
あなた
……。無理すぎるな…
あなた
今、何万貯まってる?
イタリア
たったの200万だよ
 
イタリア
……もう…どうしろって…
 
絶望をにじませた声で、絞り出すようにそう言う彼。同年代ぐらいなのに、自分とは比べものにならないことで悩んでいるのを見て、心が痛くなった。

自分までやるせない気持ちになってくる。
あなたはそっとイタリアの背中をさすった。
あなた
(…………)
 
あなた
………ん?
自分の悩み。それはなんだったか?



あなた
……イタリア
ビジョンが見えた。
あなた
俺も、困ってたことがあるんだ
俺の悩みも、彼の悩みも解決できるビジョン。
あなた
俺も君の困りごとをどうにかする
あなた
だから、君も俺に協力してほしい
イタリア
え……?


俺の家にある金。現時点でざっと数えて億単位。
ビッグ消費チャーンス!!!!!
どうやら俺はツイていた!
 

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