「久しぶりじぁんか。」
財閥なんて腐った体制が残るこの国の中で実家は分家というなんとも微妙な位置に君臨していた。
そんな俺は多くいる兄弟の下の方
奔放で特に秀でた才能のない目立つわけでもない俺は
放任されて育った。
『樹くん、この前のお披露目会ぶりだね。』
髪切った?なんで笑うこの人は俺の女ーーー
なんてね
自分で言ってて虚しくなってくるわ
『北斗から聞いてたけど、また金のアクセサリー増えた?』
そう。この人は俺の親友で実家の勤める本家様の
一人息子、松村北斗の婚約者だ。
「それでこそ俺でしょ?金が俺も求めてっから」
『え〜でも治安悪く見えるよ』
「んは笑、お前は嫌い?」
『樹くんだから嫌いじゃない。』
「へぇ〜」
ほんとこいつのこういうとこ。
お前が何気なく言ってんだろう一言が気になるんだよ
ゴールドにサングラス。時計つけたメッシュの頭を嫌いじゃないとほざく同じ口で
アクセサリーは殆どつけない清潔感溢れる黒髪の男を愛してるくせに。
どうせならもっと疲れ切って助け出してとでも言ってくれれば言うのに俺が夜の街で飲む女たちよりも幸福な顔をして笑うから。
いやそれすら言い訳なんだろう。
俺が北斗から奪う気なんて何もなくて、勝ち目ないのも分かってる。
俺の魅力が北斗にないのと同じやつに
俺は北斗の魅力を何も持ってない
「ねぇほらそろそろあなたが可愛いって騒いでる京本が来るよ?」
『え!きょも会いたい‼︎ほくと〜着いてきて』
「いや俺は気まずいだけ…」
『ありがとう!』
「ねぇもう…はぁーーちょっとだけね?」
俺に少しだけ目線を合わせて可愛いあの子に連れられて行く北斗。
口調は不満そうなのに隠しきれない本心が垣間見える。
俺は1人酒を当てながらその背中を一生見てるだけ
引き止めることもしない。
ただお前ら仲良いなって笑うだけ
北斗は人の感情に敏感だから気づいてんだろうよ俺の隠し事に。
でもあいつなりの気遣いかそれとも俺との友情を守りたいからなのか引くくらいの独占よく持ってるのに俺には何も言わない。
もしかしたらどうせ俺が何もする気がないのも
見透かしてんのかもな。それはそれはでムカつくな笑
でもこれは気づいてないっしょ。
お前の婚約者がつけてるその指輪。
こっそり俺が買ったのと入れ方かえてることを












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!