第94話

95【長尾景との出会い】
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2025/08/15 12:16 更新






誰もいない静かな家で過ごす午後、ふと本棚を漁ると
分厚い、表紙が臙脂色に加工されたアルバムを見つけた


それは酷く埃を被っており所々傷んでいたが、傷をつけない様に優しく埃を払い落とした


詳しく見る気は無かったが、ふと何気なく開いたページに目を奪われた
皇戯あなた
……うわ…懐かし、この写真
皇戯あなた
いつだっけな…











今から15年前、この頃既に神祓であったが、人員の教育の為祓魔師と関わりを持つ事が増えていた


その祓魔師の中でも名家とされる「長尾家」の長男の教育を任され、本人に会いに行く事となった
皇戯あなた
初めまして、長尾様、お会いできて光栄でございます。
皇戯あなた
本日からご子息の稽古をつけさせていただきます。神祓、壱番隊隊長の皇戯あなたと申します。
長尾家当主
遠路遥々ご苦労、今日からよろしく頼む
長尾家当主
このぼんくらを使える様にしてくれ、離れにある棟は好きに使っていい、その近くに武道場がある
皇戯あなた
……
皇戯あなた
承知致しました。
人を物の様な言い草をする当主に若干の不信の念を抱いたが、仕事と割り切り、例の「長尾家の長男」に挨拶をする為、「長尾家」の敷地に足を踏み入れた






皇戯あなた
お初にお目に掛かります。本日から貴方様の指導役を承りました
皇戯あなた
神祓壱番隊隊長、皇戯あなたと申します。
皇戯あなた
暫くの間、よろしくお願い致します
長尾景
……はい
皇戯あなた
…なんとお呼びすれば宜しいでしょうか、長尾様。
長尾景
…景でいい
皇戯あなた
承知しました。では景様、本日から刀の稽古を致します。
皇戯あなた
毎日8〜10時間の稽古をと、当主様から伺ったのですが、まずは一日の時間配分を決めましょうか。
長尾景
…はい
皇戯あなた
当主様は朝に3時間、昼に5時間、夜に2時間と仰ってましたが、如何なさいましょう。
長尾景
…そのままで、お願いします
皇戯あなた
承知いたしました。
皇戯あなた
では本日は日暮れも近いので、夜の2時間だけの稽古としましょう。
長尾景
…はい





夜8時頃、薄暗く硬い床の武道場で稽古が始まった。

ただ、この年にしては珍しい程、鋭い剣線、正確な打ちを持ち合わせており、稽古をするまでも無い様に感じた。
皇戯あなた
そうです、重心をもっとこちらに…体幹が安定する様に
長尾景
ッはい
皇戯あなた
…一度休憩にしましょうか。
長尾景
はい
皇戯あなた
…どうですか、きつく無いですか?
長尾景
まだ…大丈夫です
皇戯あなた
それならよかったです。
皇戯あなた
…でも、本当に宜しいのですか?
長尾景
何がですか
皇戯あなた
この稽古を取り入れた生活に慣れるまで、こちらの離れで暮らす事ですよ
長尾景
あぁ…
長尾景
大丈夫ですよ
「長尾家長男」に稽古をつけ初めてから早2週間、徐々に彼は心を開いてきていた。

淡々と業務的に接していると、「長尾家長男」の方から話題を持ちかけてきた。

丁度その時、自分の任務が終わった直後であり、怪異の返り血に塗れていたが、平然と近づいたことに驚いた。
長尾景
…皇戯、さん
皇戯あなた
はい、如何なさいましたか?
長尾景
あなたさんは…なんでこの仕事受けたんですか、ただのガキの世話するだけなのに…
皇戯あなた
……
長尾景
やっぱり…給与がいいから、とか
皇戯あなた
いや、私は金なら余る程持っておりますので
長尾景
じゃあなんで…
長尾景
皇戯さん、この仕事嫌いですよね
皇戯あなた
…この仕事、というのは?
長尾景
神祓とか、祓魔師とか…そもそもこの国自体嫌いでしょ
長尾景
…違った?
皇戯あなた
………
長尾景
別に取り繕わなくてもいいですよ、此処にはお父様もいないですし
この時、齢12の年端もいかない子供に自分の心の内を見透かされ、余計な肩入れをする気は無かったが少し興味が湧いてしまい、本音を溢してしまった。
皇戯あなた
嫌いだよ
皇戯あなた
この国も、魔も、神も、上官も
皇戯あなた
人が毎日死んでんのに、何の感情も湧かないやつしかいねぇんだ、ぶっ壊れてる
皇戯あなた
おかしい奴しか居ないんだよ
皇戯あなた
…そっちのが正しいんだけどね
長尾景
じゃあ、あなた皇戯さんも、人が死んでも感情は湧かないの?
皇戯あなた
いや…俺はそんなに強く無いから
皇戯あなた
毎度毎度仲間が死ぬ度に吐く程落ち込むし、立ち直り切れた事ねぇし…でももう泣けない
皇戯あなた
涙腺枯れちゃったw悲しいのに、泣きたいのに泣けない
皇戯あなた
まぁはっきり言って業務の邪魔だから、こんな感情捨てるべきなんだけどね
皇戯あなた
…話し過ぎましたね、すみません。
長尾景
なら、いいんじゃねぇの
皇戯あなた
はい?
長尾景
まだ壊れて無いなら、心があるなら、それが正しいと思うけど
皇戯あなた
…そうですか
長尾景
うん
皇戯あなた
お心遣い感謝致します
長尾景
いや…まぁ……
皇戯あなた
では、稽古を始めましょうか
長尾景
…はい

それから1ヶ月後、稽古中に1体の大型魔が襲撃してきた。

nhchwing)%’*#’¥&@mcgujnfu(*fn,v=ome!?!!
皇戯あなた
っぶね…お前ガキに手出すなよ!(大型、んで特級……子供1人守りながらだときついか?)
皇戯あなた
景様、お怪我はしておりませんか
長尾景
大丈夫…でも皇戯さんが…
皇戯あなた
私は大丈夫ですよ
皇戯あなた
っ…とっとと消えてくんねぇかな…!
皇戯あなた
魔の退治は…専門外なんだけど……
‘M#j4jn4us’¥:!chmsopa!@)ejf9&j*hoamhdm”msm?!
皇戯あなた
っ゛…とっととくたばれよ人に害をなす塵虫が!

渾身の一撃を喰らわすと、魔は塵となって消えた。

案外あっさりと祓えてしまい、もう少し歯応えが欲しかったと感じた。
皇戯あなた
…消えるタイプのやつだったか(報告書無しでいいな、ラッキー)
長尾景
……
皇戯あなた
大丈夫ですか?
長尾景
…よかった
皇戯あなた
はい?なんと仰いました?
長尾景
かっこよかった!まじで!
長尾景
俺正直お前の事信じて無かったけど、今ので見直したわ!
長尾景
さらっとあんなでっけぇ大型魔ぶっ倒して!
皇戯あなた
は?
長尾景
なぁ、お前の事あなたって呼んでいい?俺の事景でいいからさ!
子供特有の奔放さを見せ、今までとは違い打ち解けた態度をとり始めた事に驚きながらも、舐めて見られていた事を知り、少し苛立ちを感じた
皇戯あなた
いいですけど…
長尾景
敬語も無しな!父様がなんか言っても俺が許す!
皇戯あなた
…お〜ん
皇戯あなた
まぁ…俺もこっちの方が楽だからいいけど……
長尾景
んじゃ、改めてよろしくな!
皇戯あなた
…よろしく、景
長尾景
じゃ〜さ、仲良くなった記念に写真撮ろうぜ!
皇戯あなた
…同じ画角に入るか?お前チビだろ
長尾景
はぁ!?屈めよお前が!デカ過ぎんだろ
皇戯あなた
はいはい
わがままを宣う子供を尻目に、カメラを持ち合わせていない為、念写で写真を撮る事にした。

暫く人と一緒に写真に映る機会がなかったので、少しの緊張感があった。
皇戯あなた
…はい、撮れたよ
長尾景
おぉ!ありがとうな!
皇戯あなた
ってか念写で記念撮影って…
長尾景
しょうがねえだろ他に使用人呼べねぇんだから
皇戯あなた
…まぁそれもそうか
皇戯あなた
…んじゃ、そろそろ時間だから稽古すんぞ
長尾景
ぇ〜、もうちょっと後にしない?
長尾景
俺つかれた〜
皇戯あなた
…ちょっとだけだぞ



それから数年が経ち、景は15歳となった。すっかり打ち解けていて、お互い悪態もつける様になっていった。

そんな中突然、「長尾家当主」に呼び出された。
皇戯あなた
あ゛、悪い
皇戯あなた
一旦稽古休憩な
長尾景
んぁ?どした?
皇戯あなた
お前のお父様から呼び出し
長尾景
え、お前なんかしたん
皇戯あなた
さぁな
皇戯あなた
すぐ済ませてくるから、素振りでもして待ってろ
皇戯あなた
帰ってきたらまた手合せしてやるから
長尾景
…はぁ〜い
皇戯あなた
後で甘味にでも連れてってやるよ
長尾景
まじぃ?やっちゃ〜
長尾景
また半分こね!
皇戯あなた
はいはい








皇戯あなた
長尾様、如何致しましたでしょうか。
長尾家当主
日々我が家の長男に稽古をつけている事、感謝する
長尾家当主
奴も15になった、実践をさせてやれ
皇戯あなた
…実践、というと?
長尾家当主
戦場に連れてゆき、実際に魔を祓わせろ


15歳とはいえ、まだ幼い子供を死の危険がある戦場に放り出す精神が知れなかったが、捲し立てたい気を沈め、話を聞いた。
長尾家当主
前にも現場は見せたが、人死にに泣くばかりで実践をしていないのだ
皇戯あなた
……(んだそれ聞いてねぇんだけど)
長尾家当主
長尾家として、痴態を晒さぬ様教育してやってくれ、泣くなんて以ての外だ
長尾家当主
あれが使える様に育ててくれ
皇戯あなた
お言葉ですが…それは本当に彼の為になるのですか?
皇戯あなた
彼はまだ、子供です。人の死を直面して泣かないなど、無理な話です。
皇戯あなた
子供なら、子供らしく感情を前に出すべきです。
皇戯あなた
それにまだ家紋を背負う年齢ではない
皇戯あなた
貴方はご自身の子供が戦場に出て、もしもの事があって帰って来れなくなったとしたら、心を痛めないのですか
最後の言葉を聞いて、怒りがわいた。

殴ってしまわない様に拳を握ったが、力が入り過ぎて少し血が出ているのを感じた。
長尾家当主
そしたらその時だ。弱い人間は長尾家にはいらない、次男を使う迄だ
皇戯あなた
ッテメ…!
長尾家当主
っ…何をする!!
当主を殴ってしまった。謝らなければと考えたが、もう言葉は止まらなかった。
皇戯あなた
ふざけんなよ黙って聞いてりゃペチャクチャと…
皇戯あなた
景を物呼ばわりしやがって…
皇戯あなた
いいか?!景はテメェの道具じゃねぇんだ、1人の人間だ
皇戯あなた
テメェにあいつの人生の決定権はねぇ
皇戯あなた
んで子の安全を守れない奴に親を名乗る資格はねぇんだよ!
長尾家当主
何をするんだ!長尾家の当主の顔を殴るなど…!
皇戯あなた
少なくとも俺は、お前の様な頭の作りをしていないから、絶対に景を戦場に連れて行く気はない
皇戯あなた
俺の方が数千、数万倍、景の事を大事に思ってる
長尾家当主
貴様…
長尾景
…っ親父!もういいから!
皇戯あなた
っ景?!なんで来て…
長尾家当主
五月蠅い!退け!
長尾景
え…
皇戯あなた
ッ゛……
この時は信じられない物を見た。長尾家当主が景に向かって刀を向けていた。実の子供の刀を向けるか?

術でも使えば外傷無しでも防げていたが、頭が回らず、咄嗟に生身で護ってしまい、血が流れた。
長尾景
あなた!大丈夫か!!
皇戯あなた
大丈夫。だから触んな、汚れる
長尾景
いや肩だろ?!ぜってぇでかい血管切れてる、手当て…
皇戯あなた
いいから、大丈夫
長尾景
……でも
長尾家当主
……今すぐ此処から出ていけ
皇戯あなた
わかりました
長尾景
っ…あなた!
皇戯あなた
じゃあね、景




それから長尾家に呼ばれることは無く数年…も経たず、数ヶ月どころか数日後、山奥の人目につかない、結界の中にある自分の家に、誰かが来た。
長尾景
…よぉ、久しぶりだな
皇戯あなた
ぅわ?!
長尾景
っはは、驚き過ぎだろw
皇戯あなた
…なんで、俺の家分かって……
長尾景
お前が残してった髪留めあんだろ?
皇戯あなた
あぁ…やっぱり置いてきてたのか、それが何になんの?
長尾景
これに残ってるお前の気配の残穢を辿って此処まで来た
皇戯あなた
は…んな術教えてねぇけど……

実は術の伝授も任されていたので、稽古の合間にいろいろ教えていたが、人の気配を追う術は教えていない。

なぜ使えるか疑問に思い問うと予想外の回答が返ってきた。
長尾景
独学だけど?
皇戯あなた
な、なんで?
皇戯あなた
それに…それだいぶレベル高い術だけど
長尾景
ん?決まってんじゃんそんなん
長尾景
あなたに会いに来ただけだけど?
皇戯あなた
いや…会いに来ただけだけど?じゃなくて
皇戯あなた
そこまでする?
長尾景
だからぁ、俺があなたに会いたかったんだって!
長尾景
あなたがあん時言ってたみたいに、俺もあなたの事好きだし、大事に思ってる
長尾景
まぁ普通に会いたかったってのがでけぇけど
皇戯あなた
…俺別にもう会う気無かったんだけどな
長尾景
は?
長尾景
なんで?
長尾景
俺の事が嫌いってこと?
皇戯あなた
んなわけ
皇戯あなた
ただ俺にそんなわざわざ会う程の価値ねぇってだけだよ、ただの剣技の指南役だ
長尾景
ふざけるなよ、このまま逃げるなんて許さねぇからな
皇戯あなた
ぇ…あ?
長尾景
だから…俺の事好きにさせた責任取れよ
皇戯あなた
………
長尾景
それに、まだ剣技全部教わってねぇし
皇戯あなた
それはそうだわ
長尾景
…だから、たまに此処に来てもいい?
皇戯あなた
…いいよ、大体いつでもいるから
長尾景
…へへ、ありがと!
皇戯あなた
…お〜
長尾景
あ、そだ!甘味行く約束まだじゃね?
皇戯あなた
なっ…覚えてたのかよお前……
長尾景
いやぁ好きな人との約束は覚えてるっしょ!
皇戯あなた
…んな真っ向に言われるとちょっと照れるな
長尾景
んひひw、また違うの頼んで半分こな!
皇戯あなた
わかったから引っ張んなって…












皇戯あなた
…んなこともあったな、懐かし
少しの間、思い出に浸ってしまっていて、時間を忘れてしまっていた。


その数秒後、玄関のチャイムが鳴った。
皇戯あなた
は〜い…ってうわ…お前かよ
長尾景
あ、あなた〜〜助けて〜
皇戯あなた
なんでそんな返り血浴びてん……
長尾景
ミスったぁ〜…
皇戯あなた
はぁ…風呂使え
長尾景
ありがとぉ〜…






暫くして、風呂から上がった景に事情を聞いたところ、逃げ回る魔に痺れを切らし、原型がなくなるまで切り刻んだらしい。
長尾景
や〜悪り悪りw
皇戯あなた
ほんとだよw
長尾景
あれ、それなに?
皇戯あなた
アルバムだよ、さっき見つけた
長尾景
え、見た〜い!
皇戯あなた
いいよ
長尾景
うぉ〜懐かし〜!これ初めてツーショ撮った時の奴じゃん!
皇戯あなた
ん、ああこれめっちゃ懐かしいよな
皇戯あなた
さっきまでずっと見てた
長尾景
これあれよな、俺が初めてあなたの事尊敬し始めた時のやつ!
皇戯あなた
そ〜そ〜、こっからだんだんお前が生意気になってくんだよな
長尾景
…そぉだっけ〜?あたちわかんな〜いw
皇戯あなた
おいw
長尾景
これは夏祭り行った時のやつで、これは花火して線香花火で俺が勝ったやつな!これが新しい羽織見に行った時の、これは禍祓にお前が凸ったやつ、んでこれは甘味所に行った時のやつで…
皇戯あなた
…てか良く覚えてんな
長尾景
…あなたは、覚えてない?
皇戯あなた
いや?
皇戯あなた
一瞬も、一度たりとも忘れた事無いよ、どの瞬間も
皇戯あなた
忘れる訳ないだろ
皇戯あなた
下らない事も何気ない事も全部覚えてる
皇戯あなた
今この瞬間もね
長尾景
へ〜ぇ…そっかぁ!
長尾景
そっかぁ…w
皇戯あなた
…何そんなニヤついてんだよ
長尾景
いや?なにも〜?
皇戯あなた
…そういえばこの頃のお前めっちゃ素直で可愛かったな〜
長尾景
…今の俺は?
皇戯あなた
何過去の自分にヤキモチ妬いてんだ、今のお前も過去のお前も、ずっと変わらず好きだわ
長尾景
…ふ〜ん
皇戯あなた
…照れた?
長尾景
…照れてね〜し?
皇戯あなた
いやいやいやwぜってぇ嘘www
長尾景
だ〜もう!飯いくぞ飯!
皇戯あなた
飯?もうすぐ夕飯だぞ?食ってかねぇの?
長尾景
…じゃあ甘味!ならいいだろ!
皇戯あなた
んふwんじゃいつもの所行くか
長尾景
お〜、また違うの2個買って半分な
皇戯あなた
分かってるってw
長尾景
…なぁ
皇戯あなた
何?
長尾景
お前がいるから俺は幸せだよ
皇戯あなた
…んは、そりゃど〜も

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