誰もいない静かな家で過ごす午後、ふと本棚を漁ると
分厚い、表紙が臙脂色に加工されたアルバムを見つけた
それは酷く埃を被っており所々傷んでいたが、傷をつけない様に優しく埃を払い落とした
詳しく見る気は無かったが、ふと何気なく開いたページに目を奪われた
今から15年前、この頃既に神祓であったが、人員の教育の為祓魔師と関わりを持つ事が増えていた
その祓魔師の中でも名家とされる「長尾家」の長男の教育を任され、本人に会いに行く事となった
人を物の様な言い草をする当主に若干の不信の念を抱いたが、仕事と割り切り、例の「長尾家の長男」に挨拶をする為、「長尾家」の敷地に足を踏み入れた
夜8時頃、薄暗く硬い床の武道場で稽古が始まった。
ただ、この年にしては珍しい程、鋭い剣線、正確な打ちを持ち合わせており、稽古をするまでも無い様に感じた。
「長尾家長男」に稽古をつけ初めてから早2週間、徐々に彼は心を開いてきていた。
淡々と業務的に接していると、「長尾家長男」の方から話題を持ちかけてきた。
丁度その時、自分の任務が終わった直後であり、怪異の返り血に塗れていたが、平然と近づいたことに驚いた。
この時、齢12の年端もいかない子供に自分の心の内を見透かされ、余計な肩入れをする気は無かったが少し興味が湧いてしまい、本音を溢してしまった。
それから1ヶ月後、稽古中に1体の大型魔が襲撃してきた。
渾身の一撃を喰らわすと、魔は塵となって消えた。
案外あっさりと祓えてしまい、もう少し歯応えが欲しかったと感じた。
子供特有の奔放さを見せ、今までとは違い打ち解けた態度をとり始めた事に驚きながらも、舐めて見られていた事を知り、少し苛立ちを感じた
わがままを宣う子供を尻目に、カメラを持ち合わせていない為、念写で写真を撮る事にした。
暫く人と一緒に写真に映る機会がなかったので、少しの緊張感があった。
それから数年が経ち、景は15歳となった。すっかり打ち解けていて、お互い悪態もつける様になっていった。
そんな中突然、「長尾家当主」に呼び出された。
15歳とはいえ、まだ幼い子供を死の危険がある戦場に放り出す精神が知れなかったが、捲し立てたい気を沈め、話を聞いた。
最後の言葉を聞いて、怒りがわいた。
殴ってしまわない様に拳を握ったが、力が入り過ぎて少し血が出ているのを感じた。
当主を殴ってしまった。謝らなければと考えたが、もう言葉は止まらなかった。
この時は信じられない物を見た。長尾家当主が景に向かって刀を向けていた。実の子供の刀を向けるか?
術でも使えば外傷無しでも防げていたが、頭が回らず、咄嗟に生身で護ってしまい、血が流れた。
それから長尾家に呼ばれることは無く数年…も経たず、数ヶ月どころか数日後、山奥の人目につかない、結界の中にある自分の家に、誰かが来た。
実は術の伝授も任されていたので、稽古の合間にいろいろ教えていたが、人の気配を追う術は教えていない。
なぜ使えるか疑問に思い問うと予想外の回答が返ってきた。
少しの間、思い出に浸ってしまっていて、時間を忘れてしまっていた。
その数秒後、玄関のチャイムが鳴った。
暫くして、風呂から上がった景に事情を聞いたところ、逃げ回る魔に痺れを切らし、原型がなくなるまで切り刻んだらしい。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!