春が訪れてから1ヶ月が経った
その間に羽根やツノの粉末が届き、アニキは幸精肉店を開店させた
その中にみんなの一部が入っているかも、と思うと少し複雑な気分になる
でも判別なんてつかないし、それがみんなの幸せなんだ
前に言っていた通り、1ヶ月で痛みが無くなった
やはり天使は願いが全てだ
この願いの力は人間になったら無くなるのだろうか
僕はまた、人間を可哀想に思った
まぁ、僕ももうすぐそんな人間になるんだけど
僕がそう言うと、アニキは外に出る準備を中断してくれた
人間になる為の方法を教えてくれる様だ
彼は「気になるならどう辛いか教えてやる」と言った
僕は首を横に振って答える
どれだけ怖いと思っても、生きる為に乗り越えなきゃいけないのだから
知ったら怖気付いてしまいそうで不安だった
アニキは"必要な道具"を買いに行った
人間が住んでいる場所はどんな感じなのだろうか
管理された場所から出た事がなかったからわからない
だからこそ、人間になったら沢山見に行きたいと思う
そして神の元で会った時にみんなに伝えるんだ
僕は生きる為だけでなく、人間になりたいと思っていた
帰って来たアニキは、「ただいま」の後にそう言った
先送りにせず、早い方が良いだろう
もうすっかりバランスが取れる様になった身体でアニキの前に座った
彼が作ったご飯を口にする
生きるなら必要になるだろうから、と料理も少しずつ習っていた
口の中の物を飲み込んだ後「無いな」と答える
言われてみれば、生きたい理由は言った事がなかった気がする
最も、理由と言う程大層な事では無いけれど
僕はずっとこの一心だけなんだ
そんな事を言われたって、怖いものは怖いのだから仕方ない
僕は死んで誰かの幸せの糧になる事が幸せだと思えないんだ
アニキは少し悩んでその肯定を返した
「10年以上経ってすっかり忘れてた」らしい
彼はいつから"堕天使となった罪"を受けていたのだろう
優しい瞳が僕を見る
僕の恐怖が初めて理解された瞬間だと思った
アニキは理解して、きっと少しは共感してくれている
彼は笑って「人間の世界の楽しい事、沢山教えてな」と言ってくれた
罪に囚われて生きて来たのだろう
僕はみんなを紹介する事も約束する
こんな約束は、きっと逃れられない"死"を怖くなくしてくれるんだろうな
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。