…俺は、エレンと身体を交換して、ここにいる
俺は、この身体に残るエレンの記憶を見ていた
愛してくれなかった両親
二人を殺し、逃げ込んだ路地裏
悪魔に出会い、連れてこられた家
魔女となり、過ごした日々
たくさん見た
…俺はエレンをかわいそうやとおもって交換した
…エレンは俺を置き去りにして逃げた
喉を焼く薬を飲ませて、ずっと身体を借りてあげると言って
なんで
誰?
痛…い゛…!
分かってた
エレンの身体に入ったら苦しいんやろなって
でも
身体を返してくれやんかったら?
そんな考えもあったのに…!
そうや
俺は
エレンの死にかけの身体に入ること
本当は嫌やったんやな
俺は
心優しい人間で"いたかった"んやな
本当は、あの時、めっちゃ怖かった
逃げ出したかった
でも
それ以上に嫌やったんやろな
失意の目を
向けられんのが
俺は
友情を信じるふりをして
自分の心に
嘘をついた
俺は
嘘をつくべきではなかった
ああ、もしかして
黒猫の言葉は
全部、俺やった
俺の魂は試されてた
そして、俺は負けた
あいつは、俺が優しいから
裏切らないと分かってた
俺が愚かだから
断れないと分かってた
…あはは
絶望することが魔女の死ぬ条件?
…はは!
やったら、俺はもう死んだ
エレンが、俺を裏切った時にな!
最後まで、あいつは魔女やった
最後まで、俺で遊んでいた
俺の命は、もう、ろうそくのように消える
…嗚呼
何も見えなくなった












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!