第11話

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2022/02/10 14:08 更新
【渋谷事変諸々無かった平和な時間軸】




今日は、数年に一度の大雪の翌日。

雪は、もちろん例外なく呪術高専にも降り積もった。

つまり、絶好の雪合戦日和ということである。

五条は、窓から生徒たちが遊んでいるのを眺めていた。


「オラァ、観念しろ虎杖!!!」


「ちょ、ちょいまち!挟み撃ちは卑怯じゃない!?」


「かよわい乙女なんだからちょっとくらいは手加減しなさいよ!」


「かよわい……?」


「あ?なんか言ったか悠二」


「ナンデモナイデス」


「高菜……」


「ああ、二人とも恐いな」


「しゃけ」


「誰かぁ、見てないで助けてー!!」


「はあ、全く……。真希さん、調子乗りすぎです」


実に平和な光景だ。

その光景は、五条の記憶を刺激する。


(たしか、僕が傑と高専にいた時も……)






「すげえ雪だぞ、傑」


教室から窓の外を見、五条は言った。


「本当だね。けど悟、雪にはしゃぐなんて子供じゃないか?」


夏油が同意しつつも五条を煽る。

ただその顔も普段より明るく、気持ちの昂りを隠し切れてはいなかった。


「え〜、夏油だってテンション上がってんじゃん。雪なんて寒いだけじゃないのかね」


反対に、家入は本当に嫌そうな顔。

机の頬杖をつき、言う。

夏油は図星をつかれてもしかし、特に表情も変えることなく隠さず言った。


「まあ、久しぶりの雪だからね。多少は気持ちも上がるよ」


ここで、何事か考えている様子だった五条が口を開く。


「雪合戦!しようぜ」


「ヤだよ」


間髪入れず家入がバッサリと切り捨てた。

むくれる五条。


「んでだよ。滅多にできることでもねーんだしいいだろ」


「ダルい」


「うわ、ババアだ」


「あ?うるせえ幼稚園児」


段々と二人の間が険悪になる。

夏油はそれを見ながらため息をついた。


「みっともないことはやめるんだな、二人とも」


五条は夏油へも攻撃的な言葉を返す。


「ガキは黙ってろ」


夏油の雰囲気が変わる。


「……私がガキだと?」


「雪に興奮してんだからガキだろ」


「悟に言われたくはないね」


少しずつヒートアップしていく。

家入は飽きたような顔をして、雪を眺めていた

そして迎える、決定的な言葉。


「上等だ、かかってこいよ傑」


「受けて立とう。後で泣くことになっても知らないよ」


ガラッ


扉を開ける音が響き、教室を出て行く二人。

そのまま校庭へと向かう。


「おら、くらえ傑!」


「そんな玉が当たるわけないだろう」


「チッ、これならどうだ」


「おっと危ない。なかなかやるね、悟。だがこれは避けられまい」


「ふん、無限張ってるし」


「無限は卑怯だろう」


「卑怯じゃねえよ、実力だ」


「では、私も本気を出していいということだな」


カオスと化していく校庭。

もはや雪合戦の域を出ている。

そもそもこれは五条と夏油の喧嘩であり、雪合戦ではないのかもしれないが。

終わりを告げたのは、夜蛾の登場。

夏油が呪霊を出したことにより、警報が鳴ったからである。

当の本人たちの耳には全く入っていなかったが。


「おい、二人共!何をしているんだ」


結果、強いお叱りの言葉を頂くこととなった。






(ははっ、そんなこともあったっけねぇ)


昔を懐かしみながら校庭へ向かう。


「お〜い。楽しんでいるところ悪いけど、そろそろ授業が始まるよ」


生徒たちに声をかけた。

と、そこへ忍び寄る影。


「隙ありぃ!!!」


そう言って雪玉を投げつけたのは釘崎。

だが、その玉が五条に当たることはなかった。


「ざ〜んねん、僕には無限があるからね」


手にはピース。


「普通に考えて五条さんには挑まねえだろ」


伏黒がぼそっと言う。


「聞き捨てならないわね!」


「そーだぞ、諦めなければきっとできるはずだ、伏黒!」


一年のやりとりを微笑ましく思いながら、はいはい、と手を叩く。


「授業が始まるよー。今日は座学もたっぷりあるからね☆」


笑みを浮かべながら、校舎へと入っていった。





                   ーendー

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