第4話

運命の出会い
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2024/06/19 05:19 更新
その日常と化していた赤の糸の概念が壊れ、本来の「赤い糸」として認識したのが数年前。

同業の先輩、江口拓也と出会った時だ。


 初めはそれが恋だと気づかなかった。

無自覚だったそれを自覚したきっかけは何だったのかすら分からないが、段々と自覚し始めたそれ。


最初はただ同僚の西山と仲の良い先輩だという認識だった。
しかし、次第に共演したり食事をしたりするにつれて、江口に惹かれていた。
気づいたら構って欲しいという思いが出てきたり、自分にしか見せない顔が見たいと怒らせてみようとしたり、挙げ句の果てには西山に嫉妬したりして。

てっきり西山と繋がっていると思っていた糸はゆらゆらと揺らめいていた。
誰にも縛られない、自由な人だと表しているようだった。



 その後、何度か彼の糸が見えない誰かと繋がったのを見かけたことはあった。
何度も切ってやりたい、自分の糸と絡まればいいのになんて叶わない事を思いながら、切れないその糸をただ掴んで眺めていた。

勿論他人が切れるものではなく、自然に切れたり結ばれたりするのをただ黙って見ていた。

黙って、見てるだけしか、できなかった。





江口拓也
江口拓也
あ、梅ちゃ〜ん!
 高いとも低いとも形容し難い声は梅原の耳に1番に届く。
梅原がおはようございますと小さく頭を下げれば、おはよ〜と緩く挨拶を返す。


彼と同じ事務所の者であれば、ピッタリとくっつくように彼のそばに行くことが多い。

しかし、同じ事務所でもない、ただの後輩である梅原は少し遠い位置に置かれた椅子に腰掛ける。

「こっち座れば良いのに」と言ってソファの自分が座っている隣の位置を叩く江口の言葉に少しだけ焦るも、「いや、いいっす」と平静を装って返事をする。

ここでふざけたように近づけたら良いのだが、このやりとりを何度か行っているせいで、もう隣に座りたくても座れない。

一度断ってしまったからどうして良いかわからなくなるし、いい加減無差別に優しさを振り撒くのはやめて欲しい。
社交辞令だと分かっていても無駄に緊張してしまう、と梅原は心の中で江口を詰った。


その後、すぐに別の共演者やスタッフがスタジオに入ってきて収録が開始される。すぐに考えを切り替えて、目の前の仕事に集中した。

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