駅から椚ヶ丘中学までの道は分かる。
行きなれた道をゆっくり歩いてく。
いつもひとりで通った登下校の道。
最後に見た枯れた木には綺麗な桜が咲いていて
道にちらほらと舞って通行人に踏まれてく
私が椚ヶ丘まで行ったところで何も変わらない
篠原あなたが死んだ事実も、
今の私が篠原ではなく猪野であることも
でも、死んだはずなのに目が覚めた時の焦り
何故か、ここに戻らなくちゃって思った
坂、しんどいです。
猪野さんは体力がないんですか。
篠原も体力は多い方ではなかったけど、
この山登るくらいは楽勝だったのに……
本日二度目の息切れ。
でも頑張ったおかげで山頂まで着いた。
__ キーンコーンカーンコーン _
聞きなれたチャイム音、
山頂にある小さな校舎から聞こえる挨拶の声
そして_________
大好きで、大嫌いな声。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!