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第73話

あいしてる🌹
85
2026/04/06 12:57 更新





※ケイアス←恭です
※恭也の失恋endもそれはそれで良いなと思っt
※最新巻まじ最高だったよね(遅






紅月家にて
ケイ
…アスカ、

声をかけても返事がなく、どこにいるのかと立ち上がると、机に勉強道具を広げたまま寝ていた。
ケイ
はぁ…

まぁ、このところレッドの仕事も多かったし、疲れているんだろう
筆記用具を簡単に片付けてやる、音を立てても起きる気配はない

いつもよりシュシュが下にある髪型をみて、結び直したほうがいいか、とゆっくりそれを外す
ケイ
髪を下ろしただけなのにこんなにも普段と印象が変わるとは、一瞬胸が高鳴ったことも否めない

髪を下ろした姿だって、寝顔だって、自分の部屋にいることだって、今までみてきたこと。
それでも、何故か…
ケイ
…アスカ
呼びかける。返答はない。

微かに動く睫毛に微笑みが零れ、そのまま白い頬を撫でる

レッドのときとは違い、何をされても安心しきっている。寝ているからか、それともおれだから…
なんにせよ、その無防備な姿を無視できるほど、おれは子供じゃなくなっていた

左手を伸ばして優しく頭を抱え、顔を近づける。
唇がアスカに触れるまで、あと少し___





ピンポーン

瞬間、玄関のチャイムが鳴る。
ビクッと体が跳ね上がり、惜しくも機会を失った

ドアを開けると、見慣れた金髪が。
ケイ
…何の用だ
恭也
そう怖い顔をするなよ
好きな子に会うのに理由が必要かい?

さらに自分の顔が歪んだのが分かる

軽く笑って流す彼は、当たり前のように家へ上がってきた
恭也
ふーん…

分かっていたかのように迷いなくアスカのもとへ辿り着くと、愛おしそうな手つきで頭を撫でた
恭也
手は出したのかい?
ケイ
…いや

生憎、この訪問のせいでな。

恋の話をする父子のような質問に苦い顔をする
そんな反応をみて可笑しそうにしているが、瞳が寂しげに揺らいでいるのが分かった
恭也
…そうだね、うん
恭也
じゃあ、帰るとするか

変わらない笑みでドアノブに手を伸ばす背中に、
ケイ
いいのか?

ピク、と一瞬、指が止まったようだった

でも、家に入ってもそのままだったサングラスを慣れた仕草で外し、こちらを振り向くと、
恭也
子猫ちゃんの幸せが、おれの幸せだよ
恭也
彼女を傷付けてまで、おれの自我を優先するつもりはないさ
ケイ
そうか
恭也
安心した?

その質問には無言を返す。

それで、大抵の意味は受け取ったらしい。

指を鳴らすと同時に姿を消した彼を、わざわざ追うことはしない
アスカ
ふあぁ…
アスカ
え、寝てた?!やばいこれ明日までの宿題なのに…
ケイ
…教えようか?
アスカ
ありがとケイぃ…!

アスカとの肩書に〝恋人〟が増えたのは、昨日のこと
数年だが濃い歳月を過ごしてきたぼくらにとって、すぐに価値観は変わらなかった

いまだって、ほぼ触れられる位置にいるのに、漂う雰囲気はいつも通り



…でも。
ケイ
アスカ
アスカ
んー、なに?
ケイ
好きだよ
アスカ
ちょ…急になんなの?!
 
独占欲をこんなにはっきり自覚するのは、アスカ相手がはじめて
自然と自分の手を添えたアスカの腕からは、少し速くなった心臓の動きが、ぼくに伝わってくる







─────────────
恭也
…愛してるよ、子猫ちゃん
 
自分の袖から出したバラは、ふっと息を吹き付けると、1枚の花弁も残さず散ってゆく
かっこつけてはみたけれど、なかなか堪えるな。
あそこまで大切に思えた女性は、唯一だった

それが分かっていながら、本気に踏み出せなかったのだから、きっとおれの自業自得さ
…自分に正直になっての恋愛には、不器用で疎いだなんて、ファンタジスタらしくもない

…でも、逆にいいのかもね。
これから好きと思える女性がいないのならば、君はずっと、おれにとっての特別な存在でありつづけるから。

サングラスで薄暗くなった視界のまま、とある団地のアパートを振り返った

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