あの噂が立ってから3週間が経過した。あの日から学校はずっと不登校だ。
…………学校は楽しい。でも、マスコミやテレビ局がつきまとうから学校2行く気分じゃない。
それに、椿が丘中学生に何かあったら困る。オレのせいになるし、迷惑なんてかけたくない。そう思って、幼馴染のキツネにすら会うことも避けてきた。
無論、迷惑をかけないために。
キーンコーンカーンコーン
「はい授業終わり!!はやく帰りなさい!!」
授業が終わり、それぞれが帰りの準備をして帰っていく。
「おーい赤村いるかー?」
「あ、はい。……ごめんウサギ、先帰ってて。」
「オッケー。」
陸上部の先輩らしき人に呼ばれた赤村くんはその人の元へ駆け寄っていく。
「あ、キツネちゃん。一緒に帰らない?」
「いいよ!!暇だし!!」
家が近い、というわけではないけど、あたしはウサギちゃんと2人で帰ることにした。
得にもならない会話をしながら帰り、バッグを置いていつもの場所に行く。
………なだらかな丘。あたしは毎日のようにここに通って、ランニングをしている。……理由は何か、説明できないけど。
ふと、丘を見ると、珍しく人がいた。………見たことのある人な気がする。
「あの……。」
そっと声をかけると、その人は振り向いた。……………って
「フクロウ!?」
「キツネ!?」
そこにいたのは、紛れもないあたしの幼馴染、桃原フクロウだった。
「な、なんでここにいるの!?マスコミは!?」
「今その話題を出すな。そこらへんも分からないのか、相変わらずのバカだな。」
「はぁぁ!?別にバカじゃありませーん!!」
「…………どこをみてそれを言っているんだか。」
ため息をついて、遠くを見上げる。なんとなく、あたしもその隣に座った。
「………まだ収まらないの?あの……デマ。」
「ああ。………しばらくはこんな暮らしだろうな。」
「そっ、か。」
なんとなく、学校に幼馴染がいないと悲しいと思いながら、その話を聞く。
「有名人が何か言ったらみんな流される。そこで流れに抗う人の意見なんて人混みの音で聞こえない。いつしかその人の意見を聞かないまま、話が進んでいく。」
………難しい話かは分からないけど、よく意味が分からなかった。
「…………水が右から流れてるとする。そこに魚を送り込む。そうしたら集団で同じ方向に泳いだり、進んだりするだろ。その中で止まったり逆走しているやつは人間社会で言うバカか変人か浮いてる人だ。次第に嫌ったり興味を持って近寄ったりする。」
ちんぷんかんぷんになっているあたしを横目で見て、フクロウは説明する。その目は、はるか遠い、未来を見ているようだった。
「集団でそうやってやってるやつには楽しいとかそう思うかもしれない。でも、あがいたり止まったり逆走しているやつは苦しかったり辛かったりする。………そいつらが追求や近寄りをやめるのは、孤立したやつが折れて、集団に混じって、なにもなかったようになってときだ。そこまで、ずうっと」
オレは孤立した獲物だ。そう言った。
………言ってしまうと、全く気持ちがわからない。だから、彼の苦しみも分からない。
…………それでいいのか。
幼馴染のあたしが、苦しんでいるフクロウの気持ちを分からなくていいのだろうか。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。